2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

第4回 ○○君(伏字)

彼の名譽の爲に此處は敢へて伏字とする事をご諒解願ふ。余の高校時代の級友に○○君がゐた。席隣にして殊に懇意であつた。或日の辨當の時間、此の○木君は、余に向かひて誇らしげに斯く云つた。 「おい、俺の今日の辨當『松茸ご飯』やぞ!」 余は驚いて云つた。…

第3回 新製品

昨晩お迎へ當番だつた。うら若き保姆さん達は余を取り圍み斯く云つた。 「お父さん!明日はお辨當で!お辨當は一段で!食べ易いやうにお握りで!」 二階建てバスで遠足らしい。ほぉ、辨當か…。長い事作つて貰ふて居らぬが辨當もえゝ。やはり辨當といへば、昔…

第2回 大盛考

凡そ食事の注文は、日常最小單位の商取引なだけでなく、其の注文者の體調の良否、生活態度までをも表はす指標であつて、延長線上には注文者の思想信條までをも示す重大行爲である。決して疎かにするべからず。 余は飮食店に入ると、注文の吟味に精神を集中す…

第1回 序に代えて

この五月、誕生日を機に二十年間吸ひ続けたるタバコを辞めた。驚く事甚だしきは階段昇れど息切れぬ。夜更かしすれども目覚め良し。酒、鯨飲にして尻長となれど酩酊は良好かつ明朗。翌日に残らず歯磨き時の嘔吐なし。とにかく調子頗る良し。元気なり。 突然に…