第1228回 某マンション自治会福祉委員会敬老会

 どこやらで私を見た方がご連絡を頂いた。Facebook記載の電話番号か。
 お客様15名のこじんまりした会ではあるが、よくお心をお開き下さり、皆さんと一体になれた。
 45分喋って12時から昼食をご一緒する予定であった。食事を聞くとお弁当ということで、熱つ物がないという。十分ほどの遅延を予めご承諾得る。
 「今日から―」、河豚鍋。55分。
 あと一緒にお弁当。奥様方と親しく団欒。
 
 退出し、時計見る。本日の地元榛原は墨坂神社、宮本太鼓台担ぎ出しに間に合う時間ではない。仕方ない、踵を返してわが母校関大へ向かう。学祭の現役諸君による第40回千里寄席を拝見しに伺う。
 
 着く。初日の中入り後から。あずき、クラーク、せいら、さしみ各君の舞台を鑑賞する。
 僕は君たちに言うべき言葉はない。何故なら僕も道の途上だからだ。ただ、所感を記録しておこう。
 あずき君、一年として君はよくやっていると思う。しかし、感情と感情の区切り目に時間が掛かりすぎて、それが死に間になっている。頑張りたまえ。僕も初めはそうだった。
 クラーク君、君も一年としてよくやっていると思うよ。しかし、あの話のどこがおもしろいのか機会があれば君と話し合おう、僕はこの日の午前中、あのお噺をしてきた。ネタは逐語で僕と全く一緒だが、感情の出しかたと、詰め方が違う。僕も初めはそうだった。君と河豚鍋をいつか語り合いたい。君の所感を教えてくれ。
 一年の諸君、みんな昔はそうだった。才能なんか関係ない。繰って繰って繰り倒せ。若い頃、本当に繰ってたことを思い出した。うわごとのように繰り倒したその先に何かが見えるだろう。僕はまだまだ先の方に光点があるだけだ。君たちの方が早いかも知れんぞ。繰れ、繰れば巧くなると信じて繰れ。
 せいら君、君は素晴らしい口調を持つ。敬愛するが、間を取ってぶつけるトリガの引き方については知っていることをいつか話してさしあげたい。君に教えてもらうことも沢山あるだろうが、少しく参考になることも話してあげられるかも知れない。たくさんいろんな人とお稽古しなさい。
 さしみ君、君は本当に立派になった。若かった少年の日、一年の頃の君を知るから、あの大きな舞台で主任としてトリを張る君を見て感慨深いものがある。
 さしみ君。先日、千太師、粋花師、茂八君と玉出界隈に遊んだ時に「落語は芝居ではなく、感情表現は現実に忠実である必要はない」ということを随分と議論したんだが、君の舞台を見ながら僕はその議論を思い出していた。君の肝心要の、笑いを誘発すべきキーのセリフが妙にリアルに過ぎて、引きの感情、裏声を多用する。落語なのに芝居なので大衆の同意や賛意を得ていない、代弁できていないのではないか、と思う。それと、速い。速すぎる。
 さしみ君、君は確か3年だったな。僕は、学生時代は4年で一応の完成を見るべきだとは思うているが、君が歩み出した道には、まだまだ先がある。そろそろこれも教えておいてあげよう。
 道は、君のいるところから僕の前を過ぎてはるか遠くの先まで続いている。30ぐらいで何とか形になればいいと思う。僕は今、また無茶苦茶になった。道草したり、アップダウンもあったり、こけたり、迷ったり、肥やしに触れたり、はまったり、それはそれは長い道がある。繰れ。稽古しよう。
 君だけに言ってるんじゃない。実は、僕に言ってる。今日から持ってるやつを繰り直そ、ワシ。
 人に講釈垂れてる場合やない。最近、サボってるわ。