第1198回 西区社会福祉協議会 家族介護教室 全3回中2回(西区社協)

 ご担当である☆野女史は言った。

 「乱坊ちゃんならできると思って!ね、お願い!」
 「ふむぅ…。わかりました。機会を与えて下さり感謝します」
 
 かくて次のお題で2回を喋ることと相成った。

 7/22(金) 成年後見制度について
 7/29(金) 遺言書の書き方あれこれ
 
 まったく無茶ぶりだ。こんなモース硬度10を軽く超えちまうハードな、かつ湿度90パーセントの充分ウェットな演題で、一介の求道者に過ぎぬ表現舎に90分で語らせようというのだ。
 確かに、5年かかったとはいえ一応は法学士ではある。が、法律関係を語る権威がない。ま、そこらは区社協も中々ぬかりがない。司法書士の梶田先生を共演として僕とのかけあいとしてくれた。これで無権威者の躊躇が半減した。
 この梶田司法書士は、名を美穂とおっしゃる妙齢の才女である。回転速く、饒舌にして明朗、弁論の経験もご豊富にして、壇上においてキュートかつクレバーな光を放つ。
 僕は彼女と出番前少しく打ち合わせして、彼女に身を委ねていこうと安心する。
 
 区社協☆野女史は、本講の狙いに応じた資料を山盛り用意してくれた。ケーススタディーを提示して、先生とのかけあいで概論を顕わとなし、最終的に気軽に区社協に相談に来てほしい、を狙いとしたいそうだ。
 膨大な資料の読み通しは、そのほとんどをマクドナルド玉出店の電源使用可喫煙席で、二日にわたり完徹して行うた。その間に用いられたコストは、ダイエットコークが2杯の200円だけだ。ローコストこの上なく、まったく表現舎むきな自習室である。
 成年後見制度は、卒業後改正されたと記憶している。以前の禁治産制度が明治風のおどろおどろしいものであった。これに比して新制度の体系は、介護保健制度が身体の不自由を補完するものとすると、成年後見制度が精神や判断の不如意に対応するものという位置付けと読んだ。介護と後見の両制度は両輪とある。
 まさに高齢化社会の進展にも対応せんとする改正であるが、制度の不浸透もあって一層の普及が求められている。近年、区社協への問い合わせが増加し、家族介護の会でとりあげることとなったようだ。
 遺言については、三十代半ばに関わったことがある。僕の先々代の相続の際に実行された遺言から漏れた相続財産(不動産)の継承を行わんとして、数世代の大量な親族間を駆け巡り押印を集めた過程で、親族・家族編の教科書を紐解いてバラバラにした。懐かしいテーマである。
 かけあいは、おたなの秘話の要領である。事例の説明はパワポを用いた通常の講演のパターンだ。アンケートを見ると、楽しくご理解を賜ったようである。
 
 全二回の終演後、肩の荷を卸した僕は、西区役所近所の公園で、夕暮れに遊ぶ童子や若いお母さん方を愛でながら中央図書館にでもいくか、とベンチを立ち上がる。
 図書館の北のブロックに「たばこ」の幟を見つけたので、店に入ると、そこは椅子付きの立ち飲み風である。上品なお母さんがひとり開店準備をされている。時刻は4時半。タバコを買った僕は恐る恐る聞く。
 「あのぉ、飲んでもいいですか」
 「どうぞ、どうぞ」
 時間が早過ぎて貸し切りだ。お母さんを相手に飲む。
 
 電話が掛かってくる。区社協の☆野女史である。会場に時計を忘れたようだ。マンモス公団の一階で飲んでるというと、彼女もお越しになるという。イケる口なようだ。1時間で仕事を終わらせるから此処で待てとおっしゃる。
 待つことにする。店のお母ちゃんと話が弾む。店周辺の歴史から、彼女の一代記、僕と同じ年の娘さんの生活までドンドン聞く。
 ☆野女史がきたころは、へべのれけれけであった。女史は勇猛な飲みっぷりの豪傑である。楽しい時間を過ごした。記録する。