第1183回 立ち飲みでの顕現

 6/29。千林商店街、サマーイベントMC初日。10:00声出し19:00フィニッシュ。休み45分。商店街内全館放送。8時間15分を最高にハイに喋る。クールさんにご挨拶し自分で納得する。片付け、打ち合わせ。M崎さんとの約束は行けなかった。
 
 終わって帰ると、僕の保険担当・K女史から「書類に不備あり、面談請う」との連絡あり。既に地元に帰り、独り寺島で飲んでいた僕は、「あらあら」と速攻帰宅し、シャワーを浴びてお約束の彼女ご指定ショットバーに赴く。家から近い。自転車だった。
 行って驚いた。うほぉっ、ここは高い。こんなとこでいつも飲んでいるのか(いい店だったがな)、退けサタンめ。焼酎ロックが600円だ。平素の倍。一杯飲んで書類預けて会わず帰る。こんなとこで飲んでいると破産する。
 返す刀でいつも行く北加賀屋の居酒屋へ向かう。この店から北へ200mしか離れてない。これの方が家に近い。キュウリの古漬け、てっちゃん焼き、焼酎ロックを注文(これで840円)。そこで隣のおじさんと話す。
 
 彼、おもむろに言う。
 
 「私は、Y運輸(物流系)なんですよ」と。突然の薮から棒だ。が、面白い話ではある。
 
 「ホホー、今は違う仕事をしていますが、僕はS急便の配送センターで荷降ろししておりました」
 「え、Sですか?。ふむぅ…、あなた、その時、相当、切羽詰まってましたね」
 
 正直、失礼な人だと思った。どんな気持ちで「S」に行こうが放って置いてくれってなもんだろ。
 
 「あなた、その時、相当、切羽詰まってましたね」彼は言った。
 
 ああ、答えようじゃないか。答えてやる。笑うがいい、実際その時、相当に切羽詰まっていたのだよ。明日をも、家族に見せてやれない状況であった。だから「S」だったんだ。
 「フフ、あなたが気に入ったな」と彼は言った。「その時、あなた、なんとかしようと思ったんでしょ」
 
 ああ、そうだ。それ以外にない。何とかしないと、どうしようもなかったから行ったんだ。
 
 「乾杯しましょう。それでいい。私もそうでしたから」
 
 僕は意味もわからず彼と乾杯した。
 
 「今、お一人ではないですね。ご家族は?」
 「います。妻に、小学4年と2年の娘が二人です」
 「ほほぉ、可愛いさかりですね」
 
 遠くを見て彼は言った。「それで良かったんじゃないかなと思います」
 誰だ、てめぇはと思いながら僕は言う、「それでいいんですか?」。落ちて行ってるだけじゃないか。今はパラダイムが違うから全て許容できているんだが。
 
 「いいですよ。私もそうでしたから。でもあなた、それで社会の見え方変わったでしょ」
 誰だ?てめぇ誰だ。それは俺が言うべき言葉だ。なんで俺の先にてめぇが言うんだ。最大限落ち着いて言う、「はい、見え方は変わりました」
 
 「良かったですね。では、僕は帰ります」
 「あっ、はい、さようなら」
 「また、会いましょう」
 
 溢れ出る。僕は泣きながら言った。「また、会えますか」
 「会えるでしょう」。彼は帰っていった。
 
 改めて言う、あれは何だ。奴は誰だ?