第1127回 昼どき日本列島

 「ウォーッ!今日は昼飯抜いてでも、宅訪軒数稼いでやるぅー!」
 
 昼勤の時間労働者にも意地がある。いざ鎌倉ならぬ、いざマダガスカルである。脱兎の如く玄関先に急襲し、インターホンを押す。
 ところが、アア、残念なことに、人類は、悲しいかな栄養の摂取において、有機物を体内に取り込み分解吸収する生体メカニズムを採用している。平安時代くらいまでは、日に朝夕の二食だったと聞くが、現代、飽食の日本では昼にワシワシと昼食(ちやふぢき)を食らう悲しい風習がある。これが12時を合図に日本国中で約1時間、一斉に行われる(あなたもしているだろう)。
 12時を過ぎてしまってピンポンすると、みなインターホン越しにモグモグしていたり、お口をフキフキ玄関に出てこられたり、あろうことか、茶碗と箸を持ったままの人に笑顔で名刺を渡すなどという最悪の事態を迎えてしまうことすらある。← ホントにあった!
 こっちも、ぶっちゃけ人気商売(昼勤)なんで、名刺を箸で摘まんで受け取られるような非常識な状態は避けねばならない。万が一誤って名刺を海苔のように御飯に巻いてお口に放り込み、ヤギ然に舌鼓を打たれると、翌日からの被験者の腹具合まで心配しなければならぬ。そうでのうてもイベントやスケジュールが多く、おまけに政局の香りする昨今、ビオフェルミンの宅配までは手が回らん。それどころか名刺にて腹痛を起こさしめた下手人として、後ろに手が回るやも知れん。
 まあ、何書いているか今一よう訳解らんようになってきたが、そんなこんなで昼時分は訪問を控えることになる。
 夕方も5時を過ぎると、台所に灯が点り、まな板の包丁音、サバを焼く匂いたら、カツオ出汁の香りてなもんが玄関先まで漂い、「あー、ちょっと今、手放されへんねん、すんません」なんていう状態が増えてくる。
 天ぷらやフライの途中で奥様方を玄関口に次々に呼び出す行為は、担当するマダガスカル地域を焼けの原にしてしまう可能性すらある。B29の破壊力を凌駕する分散設置型自動起爆装置付ナパーム弾のトリガーになってしまうのは嫌だ。
 よって夕方も5時を回るとガックリと事務所へ帰到する。今日はお礼参り自己最高軒数を更新した。
 日報を書いてフィニッシュするのだが、既にこのころには頭のコルク栓は抜け、目は飛び、口の端(はた)から細い涎を一筋垂らしている(ような心持ちだ)。大脳皮質がシュワシュワに泡立っている。魔法の水・キチガイ水を経口大量流入、脳幹にピンポイントで直撃、世情のアラを滅菌洗浄して、ようやく平素の酒毒が行き届いた表現舎乱坊に立ち戻れるのである。
 さて、今週は極道が過ぎた。火曜から連夜である。いつ家を唐傘一本で放り出されてもおかしくない状況だ。
 というか、ネタ繰ってないし。シャレならん。