24日木曜日。来舞兄より分秒で島内を経巡る僕に着電。
「乱坊!今日がなんの日か解ったるか」
「へ?」
「今日がなんの日か解ったあるか、ちゅうねん」
「なんです?」
「解らんガキやな。せやさかい、今日がなんの日か解ったあるか、ちゅうてんねん」
「はいなっ!とんと、一つも、さっぱり、全然、皆目、まったく、解ったないねん、ちゅうてんねん」
「ちゅうてんねん、て、お前、先輩バカにしてるやろ」
「そんなん、ちょっとしか思てませんよ」
「思てんねやがな」
「ばれましたか、さーせん」
兄が血相を変えて電話をしてきたのには訳がある。
笑鬼OB会長、道を求める者の枢軸・盟主たる小父貴の誕生日という。何かプレゼントを持て行こ、一杯飲める、とのご提案であった。
僕は、月曜に九州男児、火曜に来舞兄と家酒、水曜にモーリタニア出身のフランス人上司と、ガツンガツンと飲んでいる。さすがにまずい。
「いや、今日はちょっとぉ」
「まあ、小父貴のスケジュール確認するわ」
えらい積極的である。いつもなら「乱坊、調べてー」となるんだが、兄貴の小父貴への世話になり方は尋常じゃない歴史がある。恩義がある。出入りの時は直参の若頭としてトラックで港湾の相手方組事務所へ抜き身ぶら下げて突入する親衛隊長である。
「空いてる言うてはるど」
「でも、僕ぅ」
「すき焼きやど、肉の、モウモウ・カウちゃんのすき焼きや言うてはるど」
「それをはよ言いなはれ。仕事終わったら走りますわ」
「よっしゃ」
仕事を終えて服部へ。手土産の一つも買い込むと(鶏肉だがな)、玄関を開ける。
「ただ今ー」
「お帰りー」
智子姉の歓待を受く。ホント、家がこんなならいい。
着いて驚いた。笑鬼さんご母堂様ご葬儀で面識のあるハルちゃんが来ていた。笑鬼さんの会社の才女である。僕のタイプど真ん中として以前の日記でも言及したような記憶がある。
その光り輝くハルちゃんの周りに、先着でドロッと酔い潰れ好色な目をした来舞兄、なぜか呼ばれてもないのにコロ込んできたやん愚兄と円九君が居た。
僕たちは、ハルちゃんとの楽しい会話に打ち興じた。みんなハルちゃんの来訪を喜び、すてきな時間を過ごした。
ハルちゃん、聞いてくれ、いや、俺の話を、今度はワイの、と愚、来、円、乱に智子姉まで混じってハルちゃんに物言う順番待ちである。
ハルちゃん、ハルちゃん、ああ、ハルちゃん。みなハルハルにかかっとるような状態だ。
おもむろにケーキが出てきた。
「へ? これ、何のケーキでしたっけ」
「俺の誕生日や」笑鬼さんが部屋の端からさみしそうに言った。
全員が言った。
「おお、そうでしたな。忘れてました」と。