第1069回 千林商店街 100円商店街 MC 出演

 土曜日。商店街店紹介、イベントかけ流し。
 
 (注 「かけ流し」とは、イベントなどでの賑わいを創造または増大させるために、告知や実況を交えながら常に言葉を発し続けることを言い、舞台などの6〜7割の力で原稿用紙を埋めるようにキーワードを踏まえて楽しそうに話し続けること。誰も聞いていなくてもくすぐりを入れながら行い、自分自身が楽しみ高みへ上るという目的を見失うと6時間くらい連続すれば発狂する可能性がある)
 
 千林のクールさんから、「乱坊!空いてたらきて、俺の伴をせい」との仰せ。クールさんと同じマイクを持てる幸せに一も二もなく応諾。
 朝、9時入り。打ち合わせ。
 「乱坊、地図のこの辺とこの辺でワーッとやって、あとサーッと全体をなめて、パラパラッと絡んで、ま、にぎやかにやって」
 打ち合わせになっていない。が、何となくわかる。
 10時声出し開始。地図のあの辺とあの辺でワーッとやって、あとサーッと全体をなめて、パラパラッと絡んで、ま、にぎやかにやった。
 5時間くらい喋っていると疲れてくる。するとクールさんが
「乱坊!よっしゃ、代わったろ」
 代わって下さった。
 
 聞く耳を持つ者は聞くが良い。
 創世期の人たちが天才であるというのは真実である。
 クールさんは生まれたときからの商店街の子供である。そのかけ流しは実に商店街用の、商店街専用のリアルかけ流しである。すばらしい。
 僕もかけ流しを少々たしなむが、僕はここでクールさんのかけ流しのすばらしさを何とか伝えたい。解りやすく言うと、クールさんは、語彙、言語量(原稿用紙枚数)、明るさ、トーン、テンポ、くすぐり含有量、自身の楽しみ具合などどれを取ってもかけ流しに必要である重要要素がすべて、乱坊の1.5倍である。各分野1.5倍あるということはかけあわされると全体で数十倍の迫力となるのだ。
 生粋の商店街っ子の喋りに魅了された。気づく。僕の喋りの基礎は、政治家の演説から来ている。己から上代3代に渡り地方政治に携わり、演説を豊富に聞く環境にあり、メッセージを伝達する手段の一つとしての言語を介したやり取りを、目的を違えて利用している。僕のは演説の目的外利用であることを痛感した。自然、重くなりやすい。
 今、この方が20年ほどの年次差を超えて、凡夫・乱坊を従え率先してリアルかけ流しをお見せ頂くこの栄光は、僕のあとから来る真の、ホンモノの表現者には、ご理解を頂けるものなのではないかと思い、記録のためにここに記しおく。