場内・前説は福島の兄との共演である。場内係で共演というのもおかしいんだが、スムーズにお客様を誘導し、チンチンにしてメイン司会に渡すのが今日の狙いだ。
服装では随分検討を重ねた。平服か、舞台衣装か、正装か。
そもそも僕らのクラブの正装は学ランだ。寄席の日は学ランが当たり前だった(今は平服になっているのな)。44歳になってビシッと詰め入りとハイカラーなんてのもいい。
大学の時は学ランの裏に龍の模様が入っていた。今なら娘たち三人の名前を刺しゅうするのもいい。二人の嫁はんの名を左右に大きく刺しゅうしたり、酔って忘れたときのために連絡先と自宅の地図を刺しゅうして、学歌を舞ったときやなんかにチラチラと見え隠れして、一体何が書いてあるんだ!と全貌が知りたくなってしまうチラリズムの極地を演出するというのもいい。
本物の民族の正装なら着物だが、もういやっちゅうほど着てるので、結局礼服にした(この話題に途中から飽きたんで尻すぼみ)。
前説。「携帯へし折り踏みちゃジャク」、「寄席の諸注意あいうえお」10分
この日は、まつ梨のバレイの発表会があり、残念ながらやん愚兄の「ニュー・ストック・イン(こう書くと田舎の安モーテル風情がして醸し出しておられる格調とピッタリだ!)」の途中で失礼しなければならなかった。
十巣師、らいむ師、笑鬼師の名演を見た。
十巣師は実に天才である。新作ながら、繰り込まれ、本日の主役である砂九佛への愛に満ちている。近親者用のネタに会場が沸いている。パンパンにお客様が詰まった場内はトップバッターから、ご臨在の妙に包まれ笑いに満たされたすばらしい空間となる。
バトンを受けたらいむ師の、舞台のテンションの高さには定評があるが、この日もとどまるところを知らぬ。うまく表現できぬが天井にカンカン当たりながら客席の1m上空を行きつ戻りつするように見える。この方を見ていると平素の穏やかさが本物なのか、舞台の上で降臨ヒョウイされている状態が本物なのか解らなくなる。
笑鬼師は、僕が知るあの話を茂八君とは異なる人物描写で進める。これはこれで一貫性があり、描写にぶれなく、新たな話の理解をさせて下さった。やっぱ、この人、うまいな。
仲入りを迎える。
三枝師の写真集じゃんけん大会は短時間でグワッとお客様と楽しむのには最適である。
続いては学乱師による。この人は、関大亭の先祖筋に当たる人だけど、関大亭特有の「間取って」、「溜めて」、「張る」、「押す」の重々4要素がない。軽くお運びされ、爽やかながらパンチラインのトリガーはキチっと引いていかれる。
そして、やん愚兄「ニュー・ストック・イン」。ウマヤ火事かなんかを聞いているようで「病気の若旦さんが出てくる話じゃなかったかしら?」と小首を傾げながら中途退場、同行の天寧の手を引きしらふにて帰る。
打ち上げは行けない、酒が飲めないんだ。まつ梨のバレイはお荷物のお迎えもあって、レンタカーを借りて会場・大阪狭山のサヤカホールまで行くんだ。正気を保って一日を過ごすのは実に大変なことであった。