第1028回 アルパに再び

あいなし【愛無】(形1)1、かわゆげなし。2おもしろみなし。− 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂発行(昭和12年1月25日新訂第360版)より引用
 
 自分に記録しておく。誰も読んでいないだろうけど、少しぼやかして書く。
 
 兄弟姉妹を通したお呼びかけによりアルパに赴く。数奇なご縁をへてたどり着いたアルパは、僕にとって、舞台での漠然とした恐怖であった他対個の関係を、「主客の一体」・「時空の共有」という、時折垣間見る偉大な理想にむけ歩ましめる概念の、インスピレーションをふと与え給うた神聖なところである。ここの天井の模様を見ていて、はたと気づいたのだ。
 特に愛無き(おもしろみも、かわゆげもない)凡夫たる僕に恥をかかせ続けながら、偉大な理想が真実であることを確信させるために、見えざる手により総勢数千人ものお客様を日々ちょっとづつ動員して行われているこの壮大な実験は、僕にとって、表現のための階段最初の一段目であることだけは確かだ。そこには「さあ、恐れることなく自分を晒してこい」と書いてある。
 機会をこれだけ与えられても、失敗ばかりしている。ついぞ最期まで理想は理想のままで終わってしまうのかも知れぬ。だが、いかにお客様に遠く、虚空に向かって語ってると思っても、最期まで心を折らず、くじけず語りきることがこの階段一段目の目標だ。
 
 今回、そのアルパに「歓迎者」の役として座せよ、との仰せである。喜んで行く。また天井を見ていたら何かが落ちてくるかもしれない。