第1006回 東住吉区いきいき教室(田辺会館)

あい・す【愛】(他、サ変)1、いとおしく思う。かわゆく思う。2、おもんず。大切にす。3、たのしく思う。このむ。4、捨て難く思う。をしむ。5、こいしく思う。したう。愛すれば其の醜を忘る(句)《呂氏春秋に出づ》人を愛するの情は、其の醜きに少しも気づかざるを言う。− 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂発行(昭和12年1月25日新訂第360版)より引用
 
 舞台前、来舞兄着電。蛇含草のことなど話す。
 田辺。20名90分。乱坊のお食事日記、今日から使える−。蛇含草。後の茶話会でも楽しく時間一杯。暑い中よくぞお集まり下さった。皆様に感謝。
 「お客様は己の心根を映す鏡」。どんなお客様であるのかよりも、いかな心持ちでこちらがその場に臨むかが問題であって、もはや彼我たる対峙の関係にないのではないか。ま、いつもうまくいかないんだが。記録しておく。
 帰り、愛する自転車・転法輪号を転がしながら、智子姉より聞きし三象師の言葉を思い起こす。三象師は言ったという。「芸と向き合う」と。『三象師語録集』というものが発刊されるなら、その巻頭に師の真筆の大書落款付きで残したい。
 上記2点、何れもやがて訪れるであろう内的体験であって、学生の時に気付いていたはずのものを、未だ思い出せぬ道の途中である。
 
 娘らは時折、思いがけぬことを言う。殊に、まつ梨の謂いを聞いていると面白い。
 僕が自転車で2、30km走って汗をびっしょりかいて帰ると、タバコの臭いと、それに混じる汗の臭いを、妻が「おっさんの臭いする、おっさんの臭いする」とうるさい。
 現在連れ添う亭主に「おっさんの臭い」とは何たる無礼か。でも「お爺さんの臭い」とか「死臭」とか言われるよりは格段にマシなので悪い気はしていない。
 だがそれに影響されて、まつ梨までもが「お父さん、おっさんの臭いするでぇ」などと抜かす。
 まつ梨に問うた。「おっさんの臭いとは如何なる臭いか」。彼女は少しく考えて「おっさんの臭いは、カニの臭い」と言う。カニなんか食わしてない。カニかまぼこしか食ったことないくせに生意気なことをいう7歳児だ。加齢臭なのではない、カニー臭だ。ワシは甲殻類か、キトサンか。
 おあと、夕食に鶏皮ポン酢を作ってアテにしていたが、ひっくり返しTシャツにポン酢がかかった。風呂に入る前だったので帰宅した際のTシャツを着たままだ。ポン酢は直ぐに乾いた。
 ご馳走様して風呂に行く。脱衣場でTシャツを脱いだとき、フワッと彼女にTシャツで煽られた風が行った。
 彼女は少し考えて「お父さん、おっさんの臭いは、カニ鍋の臭いやわ」と言い直してきた。ポン酢の臭いが入ると「カニ鍋」に昇格するらしい。何となく解る気がする。
 今度、汗にまみれた浴衣を、米を溶いてビシッと糊付けして嗅がしてみよう。「カニ雑炊」という単語が飛び出す確立は非常に高い。