第960回 北すみれ落語の会

あいか【哀歌】(名)悲しき心を詠じたる歌。− 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂発行(昭和12年1月25日新訂第360版)より引用。
 
 朝9時に阿倍野区民センターに赴く。去年世話になった友人の田中君から先週電話があって、阿倍野区民センターで助けて欲しい!ってことだったから、荷物運びとお持ち帰り用ポスター巻き巻きを手伝い。久しぶりにお会いした端山の小父貴と二人でどんどん作業した。
 この日、この阿倍野区民センターで田中君らの事務所の会合があって、その中で松喬師匠が落語するというのを「当日」聞いた。田中君はこのことを何も言わなかった。カバンからおもむろに手拭を出して奥歯で噛み切るくらいに噛んで悔しがった。見たかった。でも次の予定が重なっていて、僕の出発時間が、会の開演時間という悲劇であった。仕方がない。即席の松喬哀歌などを口ずさんで田中君への恨み節を炸裂させてやった。
 田中君の上司・森田さんが、手拭を噛み続ける松井泉水な僕を見かねて「ランボちゃん、松喬師匠とこ行くけどご挨拶に連れったろか?」とお声がけを頂いた。
 最近聞いてる中で松喬師は、喬太郎師、小三治師、雀々師、市馬師などと共に安心して聞ける、音源のファンを自認していたので、単なる一ファンとして、楽屋にご挨拶し握手して頂いた。僕は松喬師がお写真で見ると恰幅のよい大きな方だと思い込んでいた。実物は割りと小柄な方と知り驚いた。「今日はまだ何するか決めてへんねん」という声は音源のままでいらっしゃった。本物とお会いできて嬉しい。
 
 11時に会場を発つ。眠い。声が飛んでいる。昨夜のおハシャギの故だ。やん愚兄と圓九君と合流。会場の城東区すみれ老人憩いの家に到着。お客様60人に、演者は乱坊「お忘れ物」、やん愚兄「青菜」、圓九君「崇徳院」の3題、計1時間チョイ。
 声が飛んでいたのでオガオガやったが、ご高齢の方の前なのでゆっくり目。やん愚兄もじっくりお進み。で、トリの圓九君。
 「お客様を見てると早いのを所望しておられるように思いました」との彼の感想通り、僕が人生で聞いたことある落語の中の最速。体感3倍速か。ちゃんと付いて来て頂ける。すごいよ、圓九。圓九、すごいよ。速いけどきちっとカギ引っ掛けて進む進む。うわーぁぁぁ。お前、凄い!感心する。勉強した。
 やん愚師と「こんな速く喋れませんね」ということで、次、生まれ変わった時にしようと決意。今生はこのままで。
 お客様送り出し。みなさん、お喜び頂けたご様子。感謝して辞す。
 梅田天狗で打ち上げ。笑鬼会長は大学でお稽古3題との由。梅田にご来駕。乾杯。砂九感謝祭のことなどお話し合い。
 アテには塩キャベツ。ごま油と塩で味付けした(生肝食べる時のごま油、塩)キャベツだが、みんなで4皿ほど食べる。みんな年を取ったな。僕は焼酎ロックを複数杯決めて、自宅に帰す。
 カバンが重いので帰って開けてみると、中からペットボトルのお茶が5本も出てきた。それからビール1本。今日色々貰ったお土産群。およそ3リットルの液体を提げて歩いていたことになる。肩が抜けそうだった。