第959回 福知山「大和丹波寄席」

あいえん【愛縁】(名)【佛】恩愛の縁あること。− 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂発行(昭和12年1月25日新訂第360版)より引用。
 
 午前9時に梅田旭屋前で待っていると、ワラワラワラとアホな顔をしたおっさんらが集まってきた。関大・落語大学OB会喜六会の面々だ。最高齢65才あたりから現役の21才くらいまで、関西でも選り抜きの逝ってる人たちが30人弱、曽根崎警察のホン南角で屯している様は壮観である。和歌山から始発に近き電車で出てきた人もいる。いきなり沸点近くに気が上がる。
 バスが到着する。運転手は呂瓶さん、笑鬼会長と智子総裁を乗せてやってくる。笑鬼会長は嬉しそうである。乗り込み。僕は運転手の横にチョコネンと正座して、後ろの座席に満杯に座る28人のアホ顔をみて満足する。最高だ。
 出発する。これから舞台なので酒はない。酒はないんだが、イキナリ朝の9時半に午前0時くらいの終電間近なくらいのテンションでみんな飛ばしていく。各地各場所のお喋りな人らが集まったわけだから、車中はずっと金属加工工場の騒音のような状態であった。僕は、出番もあるので声を飛ばさぬ程度に声を張ったが、高齢者らの筋金入りの大騒ぎに全く呑まれてしまった。
 僕は僕の1年5年の呂瓶さんと、自分達の時代の総括をしながら、この人たちとの愛縁を確認し、落大40周年以降の落語大学の結び付きが尋常ならざるものとなっていることを、アホ満載のバスを振り帰り堪能した。
 現地到着。ご用意頂いたお弁当は、今年僕の口に入った弁当で最高に値が張るものであったろう。
 開演。当日は司会。来舞兄と袖から出て行く。左2列目からの1ブロックの皆さんの応援に励まされ、何とかしなくちゃと予定にないことまで話す。予定にあることを全然話せなかった。兄ちゃんごめん。
 茂八君「牛ほめ」、らいむ師「看ぴん」、小樂師「皿屋敷」の三題。それぞれに席を暖め次席につなぐ。
 続いて中喜利。やりくり、あいうえお。笑鬼師、来舞兄、一八兄と、現地調達の高木君(関大出であった)、そして大喜利の帝王・やん愚兄である。彼の涙目と失語症には定評がある。お客様は、瞬時にやん愚兄のしどろもどろを我が事として、べったり手に汗を握ることができる。やん愚兄の脳内の悶絶を共有できる一大イリュージョンである。高木君が落語大学で、やん愚兄が現地調達のようであった。「やん愚さんの目に涙」の演出はまた腕を上げられた。
 休憩。食いつき、千太師「京の茶漬け」でグッと聞かせて、圓九君「天神山」。僕は終始、金屏風とパテーションの隙間からお客様のお顔を見ていたが、しっかりとお話に入っておられ、お楽しみ頂けた方が多かったと思う。
 さあ、帰りだ。一人にお土産として二合瓶が一本。僕はそれをちびちび、車中ではビールなどというソフトアルコールが出て利尿作用が促進され、サービスエリアは各駅停車の状態。またもや金属加工工場の雑踏に突入する。
 目的地は江坂の河豚鍋だ。筋金入りのアホ約30人が一堂に介し鍋をつつくのはエライ騒ぎである。雑炊うまかった。色んな話をした。
 江坂から帰り、粋花師、マッカ師、小樂師、千太師、茂八君などともう一軒行って帰る。面白い賛助であった。
 記録のために参加者を記しておく。

 茂八君、らいむ師、小樂師、千太師、圓九君、来舞兄、乱坊、笑鬼師、やん愚兄、一八兄、一福君、学乱師、呂瓶兄、円太九師、鈍九里師、狂角師、罰太師、童楽師、さやか師、瑠畔兄、烏龍君、忠拝君、九宇留師、マッカ師、蝉丸君、茶染君、智子総裁。 ※記憶に従い書いたが漏れ落ちあるときはご指摘願います。