第957回 嘆きの誤飲

あいいん【愛飲】(名)好みて引用すること。− 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂発行(昭和12年1月25日新訂第360版)より引用。
 
 一日一引用では、辞書一冊の短文作成練習が本当に二千年くらいかかってしまうので、書ける時に先を急いでおこう。まだ1頁目を終わってないのだ。
 
 ウチの冷蔵庫は季節感がない。季節によって余り内容物は変わらない。
 確かに旬の物は価格が下がるので入庫される機会は増える。秋刀魚や胡瓜、トマトなどの生鮮食料品は季節ごとに冷蔵庫の彩りを変える。
 しかし、年がら年中、愛飲するものに「麦茶」がある。国内産六条大麦茶(廉価版)は、いつも薬缶一杯に炊いて、僕用に空いたペットボトルに入れ冷蔵庫で冷やしている。まあ常温でもよい。
 「酔い覚めの水千両と値が決まり」とはよく言ったもので、この水が僕には麦茶なわけだ。これは夏冬関係ない。
 飲むときは男らしく行く。ペットボトルを開け、正一合入るコップに並々と注ぐ。それを台所で腰に手を当て、一気呵成に食道の喉ごしをほしいままにして、胃の最下端、十二指腸の直前辺りに叩き付ける様に呑むのだ。
 バソプレンの働きにより酩酊後の利尿が促進され、激しく脱水した全身に麦茶が高速に浸透して行く音が聞こえるようではないか。
 キチガイ水にまみれた胃や腸壁を洗浄し常態に帰してくれる。酒が既述のように蘇摩のごとき「トランス導入剤」とすれば、麦茶は僕が正気に立ち返るための重要な「気付け薬」なのである。
 これからやってくる夏場は随分と気を付けなければならないことがある。例年よくあるんだが、正一合を男らしく飲み干した後、それが前割して置いてある「素麺つゆ」であることに気づくことがあるのだ。
 週に1回くらいのペースで間違える。まあ、あれもうまいんだが。