第953回 小旅行

アイアイ【藹藹】(名、副)しげるさま。多きさま。− 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂発行(昭和12年1月25日新訂第360版)より引用。
 
 久方ぶりのアルパ会合に参加する。一言で説明するのは難しいが、平素お世話になっている方への謝恩会だ。
 堺での所要が終わったが、乗っていた愛車Canondale社製M500型リジットバイク「八咫烏号」を自宅に置きに行く時間がなかった。自転車を放置して電車ではいけない。
 天候は降り出したが霧雨だった。濡れる尻から直き乾く「ジキカワ」。目的地の会場は同じ堺市内なので「えい、ままよ」とポケット地図を見ながら泉が丘の会場まで走り出した。
 仁徳天皇稜を越えて府道34号に添うた時「ああもう少しだな」と踏むペダルに力を入れる。僕のポケット地図「昭文社エリアマップ1万分の1大阪文庫版」は、領域が深井の手前で切れている。深井を越えると泉が丘は次の駅だ。楽勝だなと口笛を吹いた。
 が、舐めていた。泉北を舐めていた、いや、旭区についで泉北も舐めていた。遠い。また遠いだけじゃない。アップダウンがきついのきつないの。まあ、とにかくきついんだ。それに府道34号を爆走するのだが、・・・・・・これ、自転車で走っていいのか?
 如何に霧雨とはいえ服は湿気を帯びてくる。「八咫烏号」の前後輪に撥ね避けはない。背面はリュック、ジャンパーの背中、Gパンの尻に一条のベルト形に濡れが滲みる。前面の顎は跳ね上げた石があたり痛い。おまけに昼走り用だから無灯火。反射板も何もない。ぜいぜい言いながら志ん生、馬生、喬太郎の三師匠を楽しむ。
 45分遅刻して到着。食事が出る。散らし寿司。うまい。音響が潰れていたようで始まっていなかった。その場を埋める雑談の中で「無人島に行くときに3つだけ持っていけるとしたら何を持って行くか」という話になった。前提は電気なし、食事だけは供給される、という条件のようである。
 順番はトリ前の3人前だった。舌なめずりして3品を考えて、嗚呼!これなら受けるだろう、と心待ちに番を待っていたら、僕の1人手前で音響が直っちまった。残念至極であった。
 和気藹藹とした楽しい時間が終わり、21時半に出発。途中仁徳稜あたりで道に迷い、堺市役所あたりで心が折れて、大和川大橋で腰が砕け、自宅に着いたのは23時15分だった。その道中、一切足を路面についていない。
 帰りは松喬、仁鶴の両師を堪能して帰る。
 
[陣中日誌]
朝、飯一膳と海苔。
昼、コーンスープ一杯。
夜、散らし寿司一皿。お茶四杯。カントリーマーム二枚。ブルボンルマンド二本。
帰宅後、散らし寿司(お土産で貰ったもの)一人前。焼酎一合。