第911回 アホの業

あ【噫】(感)感嘆の情を表す聲。ああ。― 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂發行昭和12年1月25日新訂360版より引用


古本屋で800ページ程の本を買つた。「詳説世界史」といふ。325ページまで讀み進めた時に、出てきた落書きの字に見覚えがあつた。
気になつて末尾のページを繰つて見たら「亂坊蔵書」の印が押してあった。
「噫!」。思ひ出した。この街に引越してきた10年前に本棚が狭くて売り払つた内の一冊だつた。
讀んだことのある本を二冊買ふことはよくある。が、自分の本を買ひ戻すのは初めてだ。当時100円で売つて、特価105円で買ひ戻した。ずつと売れなかつたんだらう。
保管料として10年分で5円だと思えば高くはない。高くはないが、アホの業なり。