あ【唯】(感)應答の聲。「女房唯(あ)といふ」。― 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂發行昭和12年1月25日新訂360版より引用
西成區梅南老人憇ひの家。カラダとコヽロ+振り遊び+河豚鍋。都合70分50名。今日は本當に樂しかつた。と言ふよりビヽつた事あり。まあ聞いて慾しい。
マクラの途中、
「ウチの親父、昭和12年生まれなんで、まあ皆さんからしたら息子みたいなもんですよね」
と言ふと、左45度の中段窓際の女性のお客樣が聲を發して
「いやー、私と一緒やわー」
「(クイックで)えゝさうなんですねー。でも聞いてから答へて下さいねー。」
等と、あたかも二人で話してるやうで、他のお客樣方にも喜んで頂く。
余は續けて云ひたる。
「實家は奈良縣なんですよねー」
すると其の女性が
「え!私も奈良縣やでっ!」
「(クイック)さうやないかなーと思てましたー。でも府下に奈良縣民50萬人位居てますからねー。」
なんか掛け合ひみたいで他のお客樣大いに笑ふことなり。で、笑ひ靜めて
「でも奈良の東の端つこの宇陀郡なんですねー。ま、是れは殘念賞でせうけどねー」
と言ふと、其の女性は客席の眞中にスックと立つてー、
「う、宇陀のどこやのん!」
「へつ?榛原です!」
「大字はつ?」
「唯(あ)、萩原です!驛前の高野です!」
「ほな、隆雄さんの孫さんか!ほだら善雄ちやんの息子はんけよ!」
「うぐっ、お爺さんの字を一つ貰ふて、ワシ隆宏て言ひますねん!」
「アラヨー、ホンマけー」
「さうでんねゲヨー」(※邦訛りダヽ漏れ)
親父の同級生なりき。
惡い事はできん。
河豚鍋をしつかり間を取つてじつくりやつたのは言ふ迄もなし。