第803回 アーチ 橋や門等で、鉄・石・コンクリートを弓形に渡して

「キュートでクレバーでゴージャス」は、乱坊が理想の女性像として強く憧れる三要素であって、これまでも本稿に紹介してきたところである。
この三条件は一見こう読める。「キュートで(かつ)クレバーで(かつ)ゴージャス」。あたかも演算子は∩、即ち and ではないかとの不安に満ちた淑女たちの悲鳴が聞こえる。
だが、実はせやない。もう少し広い。今時、こんな看板を掲げていても、ひっかかってくるのはグレイスケリー嬢か、ダイアナ王妃しかいない。死滅している。本邦大和撫子6000万人の皆さま方におかれては、上記条件に合致しないからといって落胆されるには及ばないのである。
真の読みは「キュートで(あったり)クレバーで(あったり)ゴージャス(であったり)」するのである。つまり∪、or である。ホッとした悦楽と歓喜の声が携帯の画面から聞こえてくるではないか。
加えて朗報がある。
演算子 nor、即ち例えどれに当てはまらなくても、女性であって、私の半径1メートルに現在及び将来において一瞬でも存在するであろうお方とならば(こっちが勝手に)即座に恋に堕ちてしまうという可能性を秘めている。女性ならどなたでも、という高いポテンシャルを持つ非常に危険な存在なのだ。安易に近付けばヤケドする。気を付けて頂きたい。
かてて加えて吉報がある(まだおまんのかいな)。
これは別に女性に限ったことではない、ということだ。男性・中性なんでも来い、なのだ。まさに「ムシャクシャしていた。誰でも良かった」という状態だ。無差別恋愛、無差別入籍である。ああ、男性諸氏の眼光鋭い獰猛な雄叫びが聞こえる。ズボンは膝下でウォー、だ(←この箇所、来舞兄専用)。
まあ冗談はさておき、色んな窓口に行ったり、用談に赴いたとき、相手方として出てくる人が可愛らしかった時、あの胸に来るドキっとかキュンとかいう感覚を「胸を射抜かれた」などと云う言い回しで表現したりするのは、誠に理にかなっている。胸が痛いことありますな。
その象徴的な存在として愛の神クピードがいる。英語読みキューピッドだな。マヨネーズのキューピーのモデルらしい。あの矢が刺さったと西洋人は思うのだろう。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Cupidon.jpg
(このクピードの絵を見たときにキュンと来た)

この絵の足元に転がっているのがアーチェリーだ。本稿の短文はこれで成就した。
奴ら南蛮は短弓。確か蒙古も短弓。日本は長弓である。
テレビで一度長弓を作るところを見たことがある。文章では書きにくいんだが、太い竹を火であぶり曲げる。
こういう風に曲げた左側「→⊃」の部分に弦を張ると思うだろ。
ところがこの「⊃」をウンニョーと反対に曲げて「⊃」を「⊂」にまで反対に反らした「⊂←ここ」に弦を張るというのだから驚きだ。相当の力がないと戦闘用のものは引き絞れないんだろうな。
那須与一はおよそ60メートル先の船上の扇の的を射抜いたとされる、それも鏑矢で、と聞いている。大したものだ。再掲になるかも知れんが、かつて陸上自衛隊の高級将校(作戦幕僚)上がりの方と親しくお話したことがある。特別な訓練をした狙撃専門のチームがあって、現代の最高の装備では7km先の空缶を撃ち抜くことができるという。
すばらしいことであるが、君の撃つものは空缶ではない。何を撃つべきかは、各々のご想像にお任かせする。
 
覚えてても全然意味のないことなんだけれども、なぜか忘れられずに覚えていることってあるだろ。
例えば、デロス同盟の公金を盟主のアテネが好き勝手に使い込み、その横暴への各ポリスの不満を受け止めスパルタがペロポンネソス同盟を組織し、ペロポンネソス戦争へと発展したこと(これ合ってんのか?)。この流れ。
僕がギリシャ人なら国史として覚えていてもいいんだろうけど、高校世界史のレベルの薄っすい知識を誰かと語り会う機会もなく、卒業後一度も引っ張り出したことのない記憶領域の無駄遣いである。

「園長は再び疑心しながら感想を言う」は、戦国の七雄を覚えるときに作った早覚えだ。当時はこれで地図のスケルトン問題を解けたんだが、今では「えん・ちょう・さい・ぎ・しん・かん・そ」の音しか解らん。漢字も解らん。
それどころか、今でも幼稚園の園長先生を見ると、何か疑心を持っているような気がして「早く感想を言ってくれ!」と訳の解らん嫌な汗をかく。消し去りたいフレーズだ。

高瀬舟」の主人公が言った「お上のなさることに間違いはございますまいから」はアイロニー。これも頭から離れない。
高瀬舟のストーリーをさっぱり覚えていないので全く使えない。まして読む気も時間もない。キレイに消去して別の記憶を上書きしたい箇所である。

「水兵リーベ」などは今でもペラペラしたポリのセーラー服に身を包み、岸壁から微笑んで手を振ってくれているんだが、マヂで一度、船を真っ直ぐ走らせてみろや!と怒鳴ってやりたい。その曲がるシップスとやらに乗って、さっさと消え失せろ。

「モル」。君は一体なんだ。使ったことないし、今後も絶対使わん自信がある。
ガソリンスタンドや小豆屋の店先で
「すんませんけど50モルだけ入れてー」とか言ってる奴見たことないし。完全消去だな。

昔から「アーチ」と言うと「ラーメン構造」という言葉が関連して引き摺り出されてくる。どこで覚えたんかわからんのだ。
携帯なんでそれを調べるのも億劫なんだが、多分、鉄骨の組み方か何かのことなんだろう。
いまだに体育館のアーチなどを見ると、どこかに縮れ麺がぶらさがっているんじゃないかと探してしまう、そんな程度の軽くぶっ飛んだ世界にいる、ノードラッグで。いいだろ。

まあ、何だ。一度きれいに頭の中を整頓し直さないと、かつての西明石の独り暮らしの部屋のようにぐっちゃぐちゃになっているってこった。