第802回 「小学館発行 金田一京助編『学習国語新辞典』全訂第二版」

天寧の夏休みの宿題に付き合わされている。
中でも難解なのは短文づくりである。
漢ド(漢字ドリル)に出て来る熟語を用いて短文を作らねばならない。

昨日はこんな感じだ。
「出」の熟語として「出口」というのがあると、お母さんが居ない間に僕は娘を指導して、以下の例文をノートに書かせた。

「出口さんのおくさんは、ご主人が出張から帰ったよく日の朝のゴミ出しは何だかきげんがよい」

「中国マフィアの手先の陳が私にピストルをつきつけて『今スグ、コノ部屋カラ出ロ!』と大声で言った」

すこぶる名文だと思うんだけど、朝起きると全部消しゴムで消してあったりする。

妻の仕業だ。
カッコ悪くて学校へ持って行かされへん、とか言って娘に書き代えを強要してる。

娘は半べそで妻の指導のもと短文を以下に書き換えた。

「いつも裏の出口から出入りしておられますが、正面からだと何か具合が悪いのですか」

くやしい。これも名文だ。


さて、この第4綴、僕も娘に触発されて短文練習をする。お題はまつ梨が幼稚園でもらってきた「小学館発行 金田一京助編『学習国語新辞典』全訂第二版」だ。
小学生用の収録語数19000語の薄ペラな字のでかい辞書だ。

明日からやってみよう。
飽きたら第5綴へ突入だから読者の皆さんは心配しなくてよい。

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短文づくりの記念すべき第一題目が「アース」とはツラい。いきなり最終回にしたいくらいだ。アースで書くことなど何もない。

だいたいアースになど縁がない。電気屋でもない限りアースをこよなく愛し、アースに満ち満ちた、アースに囲まれた幸せな生活などちょっと想像が出けぬ。

確かに、冷蔵庫も、洗濯機も、電子レンジも、PCにもコンセントの端から緑の電線がピョロッと顔を出していて、

「わし、アースでっせ。つなぎなはれやー。わしをつながなビリビリっときて死にまっせー」と訴えかけてくる。

わかっている。わかってはいるんだが、高々、交流電圧100ボルト位で死ぬの生きるのとビビっているのを、CPUもない単なる家電製品どもに見透かされ、鼻で笑われているような気がして、未だ接地したことがない。

まあ、アースに思い入れなどない。仕方ない。第一回がこれとは情けない。

話を変えよう。先程、高々100ボルト、等と偉そうに書いたが、電気のことでも書いておこう。

子供の頃、自宅のコンセントにピンセットを突っ込んだことがある。

子供っさんのいるご家庭は気を付けて上げて欲しい。

ピンセットで直結された二つの穴は稲光のような眩い閃光を放ち、差し込まれた二股の先は高温で赤くなり、ヒューズが落ちて家中の電気が消えた。

私は驚愕しその場にそのままの姿で数分間固まっていたのを覚えている。

以来、大人になった今も自宅にピンセットはない。危ないからだ。

最近、気になって仕方ないものがある。

洗面所に、妻の、毛抜きが、あるんだ。

ああ、あれをコンセントに突っ込みたい、バチバチピカッーとやってみたい!という強い衝動に駆られるときがある。

憤怒。嗚呼。ここが我慢のしどころである。