第794回 国家警備員

奈良町辺りで道に迷うた。行き先がサッパリ分からなかったんである。
前方から巡回中と思われる警察官が歩いて来た。しめた!警察官に聞けば解るぞ。
聞いた。彼には解らなかった。
「すいません、僕はここの警察じゃないので」
胸に「愛知県警」とワッペンが貼ってある。

ありゃりゃ。僕は新聞を読まない。ネットを機械翻訳して読んでいる。国内ニュースはつけ落ちであった。
愛知県警が奈良に侵攻しているなどとは知らなかったんだ。
間にある三重県警は殲滅されたか。愛知と奈良町をつなぐ直線の上にある我が郷土などは交通の要衝にあることからさぞや激戦地となっただろうが、縁の在った人達は無事でいてくれるだろうか。
僕は奈良が田舎だ。出身がばれると引っ張られるかも知れぬ。
「あ、じゃ、いいです」
そそくさと彼を離れる。怖い。百メートルも行くとまた警官。今度は味方か?
「あのー、すいません」
近づいて、しまった!と思うた。またもや胸に付けてるマークは「愛知県警」だ。
観念した。もうだめだ。腰にはまぢのピストルがぶら下がってる。
なぜ、なぜに今夜はこのように愛知県警にいかれこれにやられてるんですか?
彼は「高校総体です。警備で借り出されています」と答えてくれた。
彼に道を聞かれた。