第755回 有料放送付

月曜日。朝は早めに出た。南海で関空に向かう。機内で色んな人の言葉を思い出す。
Tさんは、ご高齢の某運動国民会議の方であるが「郷土や国家に御恩返しするつもりで、君がお話できることを精一杯、男児意気に感じて語れ」とお命じ下さった。
会長は「上手になることが目的ではない。人間関係づくりと社会的な意義があると信じるから話すんだ」と机を叩いて看破した。
地獄家師は、たこ焼きを食いながら「お前にしかできぬショーを見せろ」と言い切って、酔い潰れ机にうっ伏した。
やん愚師は「臭い!お前のは大衆演劇じゃないか」と吐き捨てるように言ったあと、焼酎をあおって眠りについた。
来舞兄はいつも電話の向こうで「君が、お客様と共に舞台を楽しんで来い」と涙ぐむ。そこは涙ぐむポイントじゃないが。
こゆきは「二度とない時間と空間で、聴衆は君の話を待っていると信じよ」と書簡に記し寄越した。
後輩諸君の才能の裏の血の努力、高齢先輩らの狂ったような反復稽古。
表現の末席を汚す者として、上下の先達の謂いや行いは、心に尊敬と安寧をもたらす。彼らの轍を進めばよい。
しかし、また決戦だ。延々と試験ばかりが続く。息の休まる隙がない。
前夜、アップアップしながら準備する。
ペイテレビなど見ている暇がない。ペイテレビなど。でもこの宿泊パックは有料放送視聴カードが付いている。大姉の陰謀だ。腎虚にするつもりか。

札幌のビジネスホテル泊。寒い。山には雪がある。物凄く寒いぞ、札幌は。