第465回 保護者會

 娘が小學校に入學して入學式や保護者會に行つたが、ちよつと親御さんたちの雰圍氣に違和感があつて戸惑つた。子育てに必死な世代のはずなのに、卷き髮でマリー・アントワネットみたいなほ母さんがたくさんいる。保護者會も異常(想像以上)に活溌で、クラス委員を決めるときなんかは、立候補者が多數擧手して度肝を拔かれた。初日なんて「1年○組 何の某の母 何の何子」つていふバリッとした名刺を交換してるんだ、母親同士が。僕や妻はポカーンとしてみてた。違ふ。知らなかつた。怖い。妻と恐れおののいた。
 ところがだ。娘の出席番號が一つ後ろの某孃のお母樣は、僕たちと同じようにこの状景にびびつてゐた。同じような感覺の人だな。妻は感じたやうだ。保護者會の時に喋つてみたらしい。回を重ねて喋つていくうちに、實際この狂態に疑問を感じてゐることが解り、とにかく何か會合があるときは一緒にいやうと決めたみたいだ。なんか馬が合つたんだらうな。匂ひが同じといふか。
 そして、なほ話し込んでいくと、今度は彼女が演劇をやつてゐるといふことが解つたといふ。妻の報告を聞いて僕はうれしかつた。表現系の人に會ふなんて嬉しいぢやないか。
 で、その次に會つたとき、彼女は稽古し倒した劇中の掛け合ひの面白いシーンをそのまま演じたら、去年のM1の豫選を通つたといふことが解つた。本選は落ちたらしいが尊敬した。
 そんでもつて、またその次に會つたとき、何と彼女は「關大卒」だといふことが解り、最終的にお向かひの「劇團・展覽劇場」のOBであることが解つた。失神した。
 7つ下らしい。五年で大學を出たことが悔やまれる。
 妻がうちは夫婦で落大だと(恥づかしさうに)いうと、展覽孃は感激してくれたといふ。保護者會で會つた。僕も感激でジワッと失禁した。互ひに砂漠でオアシスを見つけたやうな氣になつてゐる。
 今日、その子の所屬する劇團の公演がある。家族で見に行く豫定だ。僕は、まつ梨とお外だらうけど。