第336回 お辨當

 幼稚園は水曜だけが辨當である(恐らく親の教育も兼ねてゐるカリキュラムと思はれる)。
 妻は早起きして卵やウインナを燒いたり、お握りを握つて可愛い辨當箱に詰めて子等に持たす。非常にコンテンポラリかつオーソドキシカルな子供辨當だ。子等は歸つて空の辨當箱を自慢げに母ちやんに披露する。褒めてもらふ…。毎週の行事である。
 私は水、木あたりで早く歸つた日には、娘等の級友諸君の辨當の詳細を聞く。現代社會の母さんたちの奮鬪努力を垣間見て、社會の健全性を推し量らんとする。(或いはお若いお母樣方の作るお辨當をイメージしてお顔を思ひ出してドキドキしたいといふ邪しまな想ひもある)。
 ウインナがタコであつたり、リンゴがウサギであつたり、海苔とフリカケで作つたお顔など…。そしてまたそれが自慢のタネとなる…。微笑ましい。
 その中で、毎回、同じ子なんだが、少し氣になる辨當のご家庭の子弟が二人いる。一人は可愛いお辨當箱なんだが、おかずや藥味なしで、うどん玉が一玉、お茶の水筒とは別に麺つゆが入つた水筒を持參、毎週つけ麺を食べてる子がいるらしい。勿論、子等の間では羨望の的だ。しかし微妙だ。アレルギーとかかも知れんから何とも言へん。
 もう一人。これは凄い。毎回、バリッとコンビニ辨當ださうだ。子供達はコンビニ辨當に歡聲を上げて羨ましがるらしいが、それを持たす親御さんの勇敢さには舌を卷く。
 
【陣中日誌】
朝、子供のパン殘り。
夜、冷奴、モヤシと豚肉の炒め物、ビール一本。