朝飯の青汁を飲みながら、僕は日課のあのワンフレーズを稽古してゐた。
「にしざわつ、がくうえん」
思ひ付いた時はなるべくうまく言へるやうに稽古する。心はパンナムの「表彰状」風にだ。何度も何度も稽古する。いつこの引き出しを開けなければならないか解らない。その「いつか」のために繰り返すんだ。
「にしざわつ、がくうえん」
嫁はんがパンをかじりながら、うまく行かずに小首を傾げる僕に聞いてくる。
「なにしてんの?」
胸を張り、小鼻を膨らませて言ふ。
「ご存じ西澤學園、アダ・マウロ孃のモノマネだ」
妻、鼻で笑ふ。
「何を言つてるの!アダ・マウロ孃なんてもうおばあさんよ。今は二代目のはずよ」
携帶では確認ができない。誰か調べてくれないか。あれだけ稽古してきたのに、すべてが無駄になつてしまふかもしれない。
最後にもう一度言つておく。
「にしざわつ、がくうえん」
な、上手いだろ。
【陣中日誌】
朝、青汁。
晝、吉野家の牛丼大盛汁ダク。スタバアイスコーヒーショート。
夜、麻婆豆腐、蕎麥燒酎。