第317回 地藏盆

 市内で都市環境は整備されて居るが、僕の居所の加賀屋にしたつて江戸期の海面埋立らしいから、古いモノは結構殘つてる。興味深いものも多い。社寺佛閣、燈籠、三角點水準點、または色んな廢墟…。とりわけ地藏尊の多さには驚いてゐる。
 これは加賀屋だけではなく市内全域にいえるが、小さな祠を市内の皆さんは實に篤くお奉りしてをられるのに氣付く。
 昨夜だ。歸り道にご老人たちが道に廣がつて群れてをられる。物凄い量だ。集まつて何事か唱へてをられる。輕くホラー映畫ばりの異樣さ。突然、ブォーブォーとホラ貝の音。知らんかつた。地藏、ホラ貝がセットとは。吹いてる人の姿は見えぬ。群がるジャージのご老體の中心で見えぬ。
 だがホラ貝なんだから、きつと壯年の、千日カイホウを終へたむくつけき山伏が正裝束に尻の鹿革、額に兜金までつけてブォーブォー吹いてるに違ひない。
 住ノ江區、なかなか捨てたもんぢやない。
 
【陣中日誌】
朝、野菜ジュース。