第198回 危險思想分子

 これはまだ書いてなかつたと思ふ。
 高校のとき、同じクラスのMが僕の部屋に遊びに來た。
 當時、僕は平良に貰つたSS九〇〇〇といふ米國の銃を摸した空氣銃(外見は本物そつくりだがそんなに威力はない)を持つてゐた。
 Mは初め部屋で空き罐などを、次に庭に出て草木の葉などを撃つてゐた。塀を超えると近鐵の線路敷きだつたんだが、彼はスヾメを見つけて銃を構へ撃つた。屆かなかつたんだらう。塀の上に乘り一發放ち、塀を越えて一發放つた。
 その時、である。スーツ姿の男逹が五、六人、彼を組み伏せると、そのまゝ彼を擔ひで去つて行つた。
 「?」
 とにかく連れて行かれた方にある驛前の派出所に行くと、彼はパイプ椅子に坐らされて警官に搾られてゐた。聞くと若草國體をご覽になられる皇太子殿下(現・今上帝)があと半時間ほどで通過されるといふことで、警備陣は非常な緊張にあつたらしい(知らんかつた)。
 射殺されなかつたゞけでも儲けものであつた。危險思想がない證を示さうとお召し列車の通過時に二人で「大日本國天皇陛下萬歳」を三唱した。
 スヾメを追ひかけて、テロリストになつてしまふこともある。各位、日常生活、充分ご注意されたし。
 
【陣中日誌兼戰鬪詳報】
4/22
晝、豚と玉葱の莖とニンニクの燒き通し、おにぎり。
夜、自家製手打ちうどん、新玉葱ともやし豆腐の炊き合はせ(載らず)。

4/23
朝、手打ちうどんの殘り。
朝一、大木のおつちやんご逝去の報あり。
蟲養ひにミスタードーナッツ1個。
晝、ケンタッキーフライドチキン
夜、寺嶋立飮部にて福島の兄を迎へて月曜定例。最後はたまゆラーメン。