第141回 野蛮人

 出された食べ物に文句を言うのは野蛮人の所業だ。生産者や料理人には僕の口から不平を言うことはあまりない。具合の悪い生産物や料理は僕如きが声を荒げなくても必ずや淘汰されてしまうはずだからだ。否、否、僕の感想が間違えているかも知れないのだから、そんなことに傾注するより完食することに全力を費やすのだ。
 しかし今日食べた所謂「ホカ弁」はひどかった。ちょっとだけ言わせて欲しい。営業を妨害するつもりはないので店は言わぬ。独立系のホカ弁屋だ。
 鮭弁。四〇〇円。いくら四〇〇円でもあれはないだろ。鮭、ありゃなんだね。マスか?味ないし解凍完了してないよ。
 卵の巻き焼き、小さいじゃん。小さすぎるよー。薄いよ。おかずスペースの人口密度を上げるのは君の役目だろ。長けりゃいいってもんじゃないよ。厚みがなきゃね。
 竹輪、おい、竹輪の磯辺アゲ。君焦げてるよ、アゲられ過ぎ。ありゃ竹輪の磯辺焦げ。第二おかずもちょっと残念。
 キャベツ、竹輪の下のキャベツよ、シャキッとしなさいよ。パッと見ただけでやる気ないのんバレてるよ、芯ばっかしやし。ほでキャベツ、味ないよ。何付けんのよ。
 ありゃー調味料なしかよ。最悪、ご飯に醤油かけて食うのに。
 漬けもんコーナーに入るのは漬けもん。君は福神漬け。カレーのおそばにはべりなさいよ。何、大きい顔して、漬けもんコーナーに山盛り入ってるん?それも尋常な量やないで。
 飯。おばあさんが炊いたみたいに柔らかいのは何故?ベチャベチャ弁当、略して「ベチャ弁」だよ、ありゃ。
 まとめるよ。ベチャ弁屋の福神漬け弁当、竹輪の磯辺焦げと薄焼き卵、芯へにゃキャベツ添え、四〇〇円。
 みな食うたけど金返してくれー。野蛮人と言われても、四〇〇円分ぼやかして貰うで。
 
【陣中日誌兼戦闘詳報】昼、鮭弁(ショックで写真なし)。夜、ねじれと角屋、後、角のうどん屋

【鮭弁のショックを受けたときの心の風景写真】添付します。