第139回 大タコ燒き會 

 福島の來舞兄が轉居した祝ひにご自宅を家族で訪問することになつた。
 ご自宅の一戸建の前に到着すると、丁度、兄の會社のロゴが入つた二トンダンプが到着したところのやうであつた。
 ご自宅の前の廣場には近在の皆さんが既にお集まりで、食材の到着を拍手を持つて迎へられた。
 自治會長さんの氣の利いたご挨拶があつて、合圖があると、地元の若い衆五、六人が手際よく荷臺の上のシートを外す。そしてダンプが荷臺を斜めに上げると、豫め地面に敷いてあつた青いビニールシートに、この珍なる食材がたくさんの氷と共に滑り落ちたのだ。お集まりの婦人會の皆さんや子供たちの歡聲が上がる。
 僕は目をむゐた。全長五メートルはあらうかといふ「大タコ」だ。大きな疱丁を持つてゐるのは板前さんだらう、鮮やかな手つきで「大タコ」のぬめりを取り解體していく。それをドラム罐二本を半分に輪切りにした四つの大火鉢の中で眞つ赤にいこつてゐる炭火で網燒きにするのだ。
 この自治會では毎年この季節に會員の無病息災を祈つて「大タコ」燒き會が執り行はれるのだが、今年は兄の引越しによる新會員の顏見せの意味もあつて、一層盛大に開催され…。
  
 あのなあ、こんと君よーぉ。こんなことあるわけないやろ。普通のたこ燒きですよ。たこ燒きをお呼ばれしたの。たこ入れて、粉水で溶いたんいれて、葱とか紅生姜とか、色々入れてソースで食べるやつ。
 おいしかつたんだよ。妙なトスを上げるんぢやないぜ、まつたくぅ。
 
【陣中日誌兼戰鬪詳報】

朝、豚汁、たらこ、飯。晝、來舞さん新宅にてたこ燒き。晩、チキンかつ、野菜サラダ、二合、お鬻。