しんみりとした空氣が流れる。燒鳥「圓太久」の奧の和室に集まつたのは十人ばかり。皆、一樣に口が重い。
やん愚さんと三歩師が、一人一人に、「おい、一杯いこか」と順番に酒を促す聲だけが部屋に響く。
注がれたビールをうつむゐて伏し目がちに默々と飮んでゐた。少し醉つたはんな君が「何でこんなことになつたんやろ!」と、泣き出した。その聲に皆、涙を堪へられなくなつて、グスグスと泣き出す。
兩翼のバカボンさんと喜太郎君が、「仕方ないぢやないか」と慰めた。つばさ君が彼女を表のカウンター連れてつて介抱していたやうだ。しばらくすると表から二人のすゝり泣きが聞こえてきた。また皆、無言…。
誰言ふとなく「哨遙歌」を謳はうてことになり、やん愚さんが序「水の都は…」を高らかに放つと暗闇の中で、來舞さんや茂八君らが崩れ去り咽び泣いてゐるのがわかる。
昨夜、滿月の夜、燒鳥「圓太久」が閉店。ご出席されなかつた人たちのために状況を傳へておきます。
【陣中日誌】
朝、二日醉ひ。
晝、炒飯(大)定食。
夜、角屋にてトンソクを2人前食つてまう。