第27回 重要!飯の食ひ方講座

 お教へしませう。まづはおかずを摘む。この場合のおかずは今、假に牛肉の甘辛く炊いたんとする。別に懷事情によつては味付け海苔でも構はない。菜つぱとアゲの炊いたんでも良い。
 これを熱々のご飯、どんぶり飯の山頂付近に靜かに被せる。そのおかずの最長邊の端と端を、箸でそつと押し沈める。できるだけ埀直に、眞下にだ。駄目だ! 愼重に、おかずが破れぬやうにだ。さうだ。
 限界まで來たら押し沈めた箸と箸を近づける。そしてくるむんだ、丸く。
 箸と箸がくつゝゐたら靜かに引き上げろ。あー駄目だ、慌てると崩潰するぞ。
 ふう/\しろ。でも言つておく。2囘までだ。湯氣を飛ばす心で。冷ますんぢやない。
 初めて口を開ける。齒を見せると下品だ。必要最小限に開けろ。こゝは注意が必要だ。
 駄目だ、やりなほせ。箸を口に近づけるんぢやない。お口で迎へに行くんだ、箸を。崩潰したら元も子もないぢやないか。
 口に入れたらハフハフだ。強くハフハフするな。咽せるぞ。咽返るぞ。
 噛め、米の甘さが解るまで。そして呑め、一呑みで。分けるな。
 これが、こゝまでが「包み飯」のターンだ。基本は「目には喜び」だ。
 
 こゝで目を再び丼に轉ぜよ。純白の米がおかずの汁で汚れてゐるのが解るだらうか。これだ、この箇所だ。「汚れ飯」は。次は汚れ飯のターンだ。
 先ほどの包み飯を1とすると、汚れ飯0.5の量をそゝくさと口に入れる。
 目線は一囘だけ周圍を走らせる。…さうだ。感づかれるな、汚れ飯と!ハイエナの感じ、盜賊の鋭さだ。汚れ飯のターンを直視されるとはしたなさが目立つんだ。
 ゆつくりと1、そして素早く0.5。長い喜びと短いハイエナの交互作業。亞と無さん風にモールス信號で言ふとツートン、ツートン、この心だ。もう一度、ツートン、ツートン…。さうだ、その調子。飯はかう食ふんだ。
 いゝか、これが日本男兒の飯の食ひ方だ。
 …まあいゝ、自由に食つてくれ。
 
【戰勝報告】

朝飯 拔き
晝飯 天丼定食(天丼普通盛+茶碗蒸し+味噌汁+香の物)880圓
夕飯 萬直しの壽司+日本酒(三輪大神神社
夜食 パスタ(ファミリーレストラン)夜食は食つた記憶なし。