第23回 居候のイソ

 學生の頃、實家で犬を飼ふてゐた。名をイソ號といふた。私が中學一年の頃、弟が子犬だつたイソを拾ふてきたのであつた。
 私は落大時代、毎晩飮み歩き、泊まり歩いて、滅多に家に歸らなかつたので、家での食事は數に入れられてゐなかつた。家族は食事を終へると餘り物をイソのお椀に入れて、翌朝の朝にイソに食べさせてゐた。
 ある日、私が夜中に家に歸り「なんか食べるものはないのか」と母親に言ふと、「歸つてくるねんやつたら電話せんかいな」とお小言をいゝながら、母親がイソのお椀から秋刀魚の開きの殘りをスッと私のお皿に戻すのを見た。あまりに腹が減つてゐたので默つて食ふた。
 實に人間は、犬といふ動物と共存して居る。お椀とお皿の矢印の方向如何によつては、どちらが家畜か飼主か、どちらが主か從か分からない。實家での私の扱ひはイソ同等かそれ以下であつたのだ。
 學校を卒業して私が就職、新人研修に出發する2日前に彼は他界した。去り時としては最高だ、見上げた奴や感心な奴やと家族で稱へた。約十年間ウチに居たことになる。丁重に葬つた。誠にいゝ犬であつた。
 
【戰勝報告】

朝飯 ゆんべの一人小鍋の殘骸雜炊
晝飯 天下一品ラーメン(並)こつてり硬麺ニンニク入り
晩飯 廣告の方とG風と行く潛水艦の燒き鳥「秋吉」へ
   寫眞なし。すまぬ。