第8回 損した

 毛だ。縮れ方が頭髮でない事が分かる。別にいゝ。そんな事を氣にするやうな飯食ひとは飯食ひが違ふ。
 ハンバーグに生えてるやうな毛を拔ひた。割と長かつた。女店員さんが余がハンバーグから毛を拔ひてゐるのを見た。
 「申し譯ございません!(大聲)」
 女店員さんよ、わー、聲を張るな。まるでクレーマーみたいぢやないか。未だ何も言ふてないし、言ふ積りもないよ。余は氣弱に「構ひません」を連發した。早く食ひたかつたんだ。
 「すぐにお取り換へ致します。」
 いらん事せんでもえゝ。まてまて、持つていくな。未だ食ふてないやないか。
 だいぶ待つて、やつと來たのにもう撤收かよ。あー、なんで飯迄持つて行くの?鹽で飯食ふのにぃ。
 結構待つて、サラのがきた。あら、ソーセージ、さつきより小さいよ。飯、普通盛に變はつてるしぃ!
 默つてくうた。八百圓なり。大盛分損した。毛め。