第1234回 伊賀市中央公民館「笑いの教室」シリーズ第6講「今日から―」出講

 11月14日。講演70分、落語25分、70名。
 パワーポイントの高橋メソッドからそろそろ脱出したかった。もっと自由に話したかったからだ。完全な素話にしてみた。
 論旨は既に軽く250回は語ってるだろうから心配はない。
 今回、70分を最後まで「ガッタ・パーチャ(注)」で走り切れたことは、次なるステップへの大きな励みとなる。
 
(注)用語解説「ガッタ・パーチャ」
 「ガッタ」は、古代印欧語族系の基幹語彙で、現代英語にもgetのgとtに語幹を残している。これは後代に玄奘による漢訳において「得」とされた。
 また「パーチャ」の原語はサンスクリット語の「パーチ」、パーリー語の「パーシー」で、漢訳の際に「把思」と音写された。その義は「空間を一体として充満する気」と解釈されている。
 故に「ガッタ・パーチャ」は「得把思」と訳され、「われ空間の一体を得たり」と訓ずる(この項は酒場のカウンターで思い付きで書いた適当な嘘であることに読者は注意を要する)。
 この義が後に「空間を埋めるもの」と転じ、歯科医師が神経を抜去する際、堀り削った神経坑に充填する樹脂のことをこの名で呼ぶようになった。現在の歯科現場で用いられている「ガッタ・パーチャ」は、未使用時には細い針金状の形状で、これを神経坑に差し入れ融着させると、坑を塞いで空間を埋め、雑菌の流入を防ぐ。神経抜取において広く一般的に用いられる歯科材料である。
 当代表現舎のスラングである「時空の共有」は、時間と空間を舞台にしたお客様との一体化を象徴するが、「時間」の概念はしばらく置くとしても、お客様と箱内(空間)で強烈なる一体感を得たとき、表現舎は「ガッタ・パーチャ!」と叫びその喜びを表す感嘆として用いるようになった。
 「一体化」は空間のみの概念ではない。気に満ちた「時間」を制限一杯一杯に過ごし主催者にオンタイムでマイクを返す状態を「ジャスト・スジャータ」ということは熱心読者らには説明を要しないところである。
 この「ガッタ・パーチャ」と「ジャスト・スジャータ」が同時に実現できたとき「時空の共有」を経て「主客の一体」が実現し、その時、表現舎はノンアルコールでは帰れない。愛と喜びと真実の美酒に酔うのである。