第1206回 伊賀市上市場区夏祭り大会出演(上市場区会館)

 春に、伊賀のお寺の桜祭で、笑鬼オジキ、来舞兄、ほたて君と落語4題で出た。その際、上市場区の役員さんが見に来てくれていなさって、ぜひ夏祭りにウチヘ!ちゅうことになり、今回、お呼びつけ頂く。一人で45分のお時間だ。
 出が18時半、17時入りなんだが、最寄JR新堂駅へ向かうのに14時半には自宅を出発せにゃならん。ちょっとした小旅行である。
 新堂駅17時着。駅にお迎えに来てくださっている。車中で短く状況を伺い、待機場所の区長さんのご自宅へ。
 お宅は古い伝統的な建て方で歴史を感じさせる。間取りは実に風庵のキーさん宅と全く同じ。田の字の間取り。鴨居、柱など実に立派で黒光りしており、伊賀、東海地方ではあるけれど、実家の大和に近いこともあって「建て倒れ」と揶揄されたかつての大和の普請への傾注に似た、思い入れを感じさせる素晴らしい建築だった。
 時間があり、ご自宅で役員さん方、区長奥様と団欒。またも実家近くの親戚の家に来たような錯覚。茶菓子食い荒らしながら様々に語る。楽しい。
 
 ここで節を分かってお礼を申し上げておく。
 風庵のキーさんにおかれては、上市場区のこの舞台においても、お膝元であることから、必要な物品がいるなら出しますよ、との心温まるご配慮があったと区の皆さんからお伺いした。
 表現舎はキーさんを実母と慕い、今ここに表現舎として在れるは平素のご厚情、ご支援のおかげと、感謝のスペシウム光線大山田村に向けて思いを込めて照射する。これにより大山田村は丸焦げ、被害甚大の大惨事となろう(お礼になったない)。
 
 さて、本番。60名。「今日から−」、蛇含草。乗せられ、乗って、45分の予定を60分喋る。お喜び頂けたろう、僕も何度か皆さんと壇上にて爆笑した。
 区の一体を計りたいという区長さん、役員皆さんの神聖なる発心に、少しくの尽力が果たせたとするなら、表現舎の存在の価値はあった。感謝します。
 舞台はねて、夏祭り会場に皆さんと同席しお接待を受く。区の青年部の皆さんが生きた鮎に現地で串して塩焼きして下さる。これが、実に、うまい。ここちよいほろ苦さを焼酎麦の生ですすぐのが最高。今風に言うと、チョー最高である(別に言い直す必要はないな)。
 平素、酒をうまいと思うて飲むことはあまりない。一刻も早くトランスに入って、見えざる、と交歓するための導入剤、ついつい未だに彼我の間にあると錯覚する端境を消し去らんがための力水、あるいは仁王立ちの妻もとへ帰る勢いを付ける気付け薬、などと脳幹にぶちあて世上の荒らを洗浄してきた。
 しかし、この鮎の塩焼きの手にかかると、「肴、酒を活かし、酒、肴を活かす」などと、宇治の一八兄がお垂れになられそうな講釈のまね事でもしたくなるではないか。齢四十半ばにして漸くアテを云々する境地に突入せしかぁ、アハハハハハ…。
 アホ顔で大笑いしながら、ふと我に帰る。区の皆さんと語らいながら、鮎、ドタマから3尾食いつくし、焼酎の4合も飲んだところだ。
 
 あら、ここは何処でしたかな?…えっと確か…、伊賀!
 「あらっ、今、何時でごわります?」
 「乱坊ちゃん、かまへん、かまへん。ウチ泊まっていたらええがな。宴は佳境やで」
 「いえ、そういうわけにはまいりません。こう見えても、私、意外にシンデレラですから」
 
 ギッリギリの終電で何とか天王寺までたどり着く。自宅までの一里半をスカウトペースで一時間余りで完歩。ロード・バーデン・パウエル卿に感謝。