第1026回 「在宅支援110番」寄席 出演

あいまい【曖昧】(名)1、明白ならざること。確かならざること。2、うしろぐらきこと。あいまいや【曖昧屋】(名)怪しげなる女を抱えおきて、客を呼ぶ家− 金澤庄三郎編『廣辭林新訂版』三省堂発行(昭和12年1月25日新訂第360版)より引用
 
 土曜日。15名本席60分(うち乱坊30分)。介護支援サービスの在宅支援110番さんと3回目のお取り組み。これまでは笑鬼小父貴との共演であったが、今回は粋花師と同板へ。
 狂角師が粋花師の付き人として見台をご持参下さる。ありがたき幸せ。狂角さんにはご準備をお手伝いただき、僕と粋花師で情宣する。
 今回、お客様数は10名(子供入れて15名か)と少なくいらっしゃったが、キャパが25の会場だから、特に問題ない。また、なんと温かいお客様方であろうか、実に公演を楽しんでおられる。
 粋花師の「おごろもち盗人」からガツンガツン食いついてこられる。気持ちイイ。チンチンに温めていただいて、拙「親子酒」。お稽古足らずをごまかし修正しながら、最後までお客様方と走り抜く。みなさん、愛しています。
 やはり僕は、いきいきやこのような形式の小屋が好きだ。お客様方と近い。きっちり目と目をあわせ、互いの息遣いがわかる。主客の間に曖昧さがない。性に合ってる。
 
 芸が小さいのかもしれぬ。大きなホールや体育館だと、先頭のお客様との距離が20メートルほどあったりする。すでにお顔が見えていない。マイクを通していただくが、性能上、一定以上出し続けておかないと、届いてない気がして、腹筋を使いまくる。一年入りたての大道芸みたくなってる自分に気づく。これで客電を落とされると、もうある種パニックのような状態になってる時がある。虚空に向かってひとりで喋っているような気になるのだ。
 救いは、最後まで折れずに喋りあげて降りてくることができるようになったくらいか。
 乱坊殺すにゃ刃物はいらぬ。200の席にまばらにお座り願い、客電落とせば即、頓死する。そのくらいの力しかない。痛感する。
 
 おあと、打ち上げ。クールさんに御来駕いただき一次会ごちそうになる。考えて見ればあの人にとって酷な話だ。
 落語大学の極初期の方だから、誰と行ってもすべてあの人の後輩である。いつも千林の一次会は、クールさんごっつあんである。そして、クールさんはその僕らの打ち上げにアイスコーヒーで座っている。あとにまだ仕事があるからだ。実にお高いアイスコーヒーである。
 「あとはお前らで好きにせい」
 「ごっつあんです」
 61歳の先輩らと僕は声を揃えてクールさんにお礼を申し上げ、近隣の居酒屋に行く。2次会だ。さまざまに感想を述べ合い、盃を重ねた。いい会であった。ありがとうございました。