第854回 鎮守の森の秋祭本宮

朝、団長のモーニングコール。強烈な二日酔い。

九時、担ぎだし。
道中、太鼓の皮破れる。破れるのは21年ぶりらしい。
団長から委任され和太鼓ハルの船津さんちへ急行。太鼓を借りてくる。思わぬ一大事に手勢の若衆らと走る。

今年は強い。
強いが、所詮は商売人ら地元の衆の太鼓。本質的には弱い。
でも棒華(ぼうばな)が下がったり落ちたりすることはあまりなかった。
和気あいあいの同窓会ムードだ。
酒を撒くと綺麗にスイングして蛇行する。

青年部諸君らは緊張感を持って担ぎ手らを見事に案内した。

院政による役員数激減から、団長以下執行部に威厳を取り戻し、一致団結して、担ぎ手の皆さんを安全運行にご案内する昨今の流れの礎となれたことは、今回の完全に世代交代し切った宮本太鼓台を見て、実に感じいる所であった。

池田君の団長終了を以て僕の太鼓台青年部は完全終了する。後は僕自身が老害となる。老害を駆逐する闘いの煽動者が老害となることは避けなければならぬ。去る。

今年の会計担当就任は、彼等に万幅の信頼と
安心を以て彼等を見送る、僕のささやかな餞けである。

祝儀合計■十三万五千円。帳面を合わせて祝儀を渡し帰り支度。

次期団長森田君が役員達に冗談で
「お前ら、来年は全員、頭、丸坊主にして来いよ。これ、団長命令」と言って笑いをとっていた。

公民館からの帰りに、会計の僕を手伝いして話を聞いていた天寧が、
「お父さん、歳が下でも団長さんが一番偉いの?」と聞いてきた。

僕は「ああ、そうだ。団長さんが一番偉いんだよ。みんな団長さんの言うことを聞いて一つになるから、あんな重たいものでも担ぎ上げることができるのさ」

僕は誇らしく答えた。

森田君がそう言ってくれていることに感慨深いものがある。