第845回 繰れば上手くなると信じる教

10/25
朝、笑鬼家の心尽しの朝飯。
阪急車中最期の調整。キチガイに見えたろう。切羽詰まる。改札で落ち。後は神に委ねる。
9時30分池田。
てるてる広場にて、社会人落語日本一の五月家ちろり師にご挨拶する。師の時間の関係でトップに出て頂く非礼と、本日トリ務めさせて頂く旨仁義切る。気さく、豪放な「大阪のおばちゃん」を絵に描いたような愛すべきお人柄。声の張りを重んじる表現舎にとって、あの不断の喋りの原稿用紙枚数は驚異である。輝く才能が眩しい。
11時30分、五月家ちろり師のインタビューに続いて、昨日同様にてるてる広場ステージで告知の大喜利。寄席前ということで参加できぬ関大勢に代わり、高丸君窓口の阪大落研現役の諸君から生徒に高丸君、のみかい君、阪大君、こしあん嬢。落大からかぼす君。先生乱坊。昨日もそうだが、概ねほぼ初見にも関わらず、彼等と妙な一体感を感じる。一緒に舞台を務める同志、百年の既知のような連帯。楽しい。やりくり、あいうえお作文。
お題を拾い、テーマをちろり師の一日とした作文は当日の趣旨、流れを把握した、即興にしては見事な彼等の発案と展開。各々自身のキャラクターを発揮してくれた。舞台上で皆の目が笑ってた。
13時00分二番太鼓の後おたな界隈引札寄席開演。昨日の延べ百人のご来場に引き続き、今日も満席。五月家ちろり師との絡みの喋り。原稿用紙対比で僕対師が1対250の勢い。圧倒される。
二人引っ込んで出囃子で五月家ちろり師「阿弥陀池」。選手権授賞作品。繰り込まれた安定とちろり師自身の人柄がにじみ出る陽気な人物描写。下座で聞かせて貰う。山は違うが同好の姉として、またこの方にも可愛がって頂けるように自身の研鑽を積もうと誓う。
阪大君「代脈」。彼の素直さや上品さが全編に渡り出ている。彼によると今度「はてな」をやるらしく視察を兼ねて今回の出演を決めたという。地味にプレッシャーをかけてくる可愛い子であった。
隣乃玄張君「源太と兄貴」。客席爆笑。下座で僕も爆笑。これしたい。良い話を教えてくれた。彼は昨日の二題に続いて三題目。お腹一杯だ。
大喜利。今回、引札で初の試み。玄君と入れ代わりで、太鼓だけで来てくれていた打西君も出て貰おうと全員で出演。一瞬楽屋が空になる。三人右左別れてやりくり、あいうえお。対抗戦。午前もあったので一段と上に上がる。舞台・客席の双方が一体と。帰る人少なく一定のご満足を得ているご様子に一安心。
高丸君「ちりとてちん」。35分の熱演。全編笑いを引っ張る。工夫努力の跡が随所に。終演後「長くてすいませんでした」と詫びを入れにくる礼儀に驚く。こっちゃ何とも思てない。
拙「はてな」。まくらなし。いきなり。お客様の期待を胸に受け、単にお話の精神のみをお伝えする媒介者とならんと念じ話す。噺に集中し、かつ自身から離れるこの感覚に至るまで、僕はこれだけの上演舞台数を経なくてはならない。頭が悪く才能がないので、一度良くても次にうまく出きるかわからない。不断の努力を重ねて現状を維持し、繰ればこんなアホでも明日に必ず上手くなる、上手くなりたいと信じて歩んで行こう。
終演。追い出し。玄関で答礼。学生時代にやっていたことを今もう一度意味を噛み締めてやっている。皆に感謝。
終演後、人数分のビールを買いに走る。二度とない時間と空間を共有した、初見の、百年の既知と乾杯したくて仕方がなかったんだ。ささやかな宴であったが再会を念じ別れる。
阪大の現役諸君らが帰った後、家族亭で昨日のボトルの残りをさらいに。残った玄君、かぼす君と。かぼす君、先に帰り、玄君もう一瓶入れる。「繰れば上手くなると信じる教」の信仰告白
言うた手前、帰りに遠回りして繰って帰る。これがまた下手で少し落ち込む。