第774回 新週末亀頭

14日、日曜。
おたな引札寄席。約40名のご来駕を受く。

第一部
平八君「ないもん買い」
千太師「京の茶漬け」
乱坊と八百屋の社長のお話
かぼす嬢「遊山船」

第二部
らいむ師「骨つり」
高丸君「饅頭怖い」
乱坊とバナナ屋の大将のお話
狂角師「蔵丁稚」

 両部共、司会乱坊
 お囃子、かぼす嬢他現役諸君
 情宣、現役諸君、演者、さくらさん

らいむ師から第二部が始まる前に素晴らしい一言を頂く。
僕は昨日、第一部と第二部との間に明確な違いがあっただろうと思う。
まさに魔法の一言だ。卑しくも舞台に上がる後輩諸候は心して聞くとよい。
この一言は必ずあなたの舞台を大きく生まれ変わらせてくれるだろう。

らいむ師は二部の司会に上がる僕にこう言ったのだ!

「乱坊、●●●●、●●●●●●●。」

この人はやはりすごい。
機を見て一言を挟む。意味が伝わり効果となって現れる。
さすがは元銀行支店長だ。旗下の士気を昇華させる最高のアドバイスであった。


ここで、ちょっとバナナのことを書く。
昨日、舞台で学んだ。

バナナには数十もの種類がある。そのうち日本に輸入されているのは八種類ほどしかないらしい。

僕たちはバナナと言うと生でかぶりつくしか知らないけんど、世界には普通に料理に入れて食べてる所もたくさんあるという。

バナナは南の国から輸入される。この時は青いなりで来ることはよく知られていると思う。

でも、その青いなりのバナナを食ったことがある人は余りいないんじゃないか。

バナナ専門小売、池田生果の親父は朝、街で僕を見掛けた時に

「今日の舞台で、青いなりのバナナ食わしたるからなー!」

と遠くから声をかけてくれた。

嬉しいじゃないか。
青いなりのバナナはきっと、さぞやさぞさぞ、さぞ水々しく、青リンゴのような鮮烈でフルーティな味に違いない!

舞台。
親父が「さあ、食ってくれ」とバナナをへし折って僕にくれる。
水々しいんだ。汁が飛び散る。
実(み)はかなり硬い。割ってみる。サクッと爪が入る。僕はそれを口元に運んで食べようとする。

お客様も僕と同じように口をあけた、羨ましそうな顔で。

口に含む。サク。

…!?…オッゲーェッ!ななな何だこれは?すごい渋じゃないか。
嗚呼、口がキシキシする。銀紙を食ってるみたいだ。
ほうれん草のシュウ酸のもっとひどいような、エゲツナイえぐさ。

「ほれ、はひはんへすふぁー!(これ、何なんですか!)」じたばたして叫ぶ。

親父が「青いバナナは食うもんじゃありません。渋が酷いんです」

「さひひゅーへーふぁー(先言うてえなー)」

親父と舞台で30秒ほど二人で見詰め合って笑う。
客そっちのけの二人の時間。楽しかった。

この緑のバナナをエチレンガスで充填した室で寝かすと僕らがよく知るバナナとなる。エチレンガスはバナナを熟させる働きをする。

後で完熟されたバナナをいただく。うまかった。

親父と機転の利いた言葉をやり取りした。
まぢで二人で見詰め合って笑った。この親父、面白い。


終演後、打ち上げ。
千太師、らいむ師、つぼみ姉、来舞兄、拙、烏龍君、ももこ嬢、かぼす嬢。蕎麦焼酎を一気にボトル空け。

帰り、兄と梅田で安酒。泣き散らかした。
気が付くと、兄と別れ、なぜか僕は難波駅でくの字にぶっ倒れていた。

何も取られていなかった。