第432回 ■第4回「津島まちあそび6時間耐久マラソン落語會」

 朝、04:30に起床。伊勢中川驛で、今回この名古屋行きに誘つて下さつた、らいむさんと合流。近鐵彌富驛で乘り換へ。
 名鐵車中、車窓を見てあれこれ喋つてゐると、僕の前の座席に座つてゐる人が虚ろな目をして何かを呟いてゐる。僕はなぜか「この手」の人によく出くはす。突然話しかけられたりされる。それも向かふの世界の文脈で啓示みたいな事を宣される事が多いので身構へた。
 隣のらいむさんに警報のために脇をつく。するとらいむさんが「ああ、榮歌さん!」と聲を發された。こつちの世界の人だつたが、向かふ(名古屋)の人だつた。
 僕たちも氣を付けないといけない。車中のネタ繰りはきつと境界ぎりぎりに見えるんだと痛感。
 津島マラソン落語會。六時間耐久。砂九師の遺志を發展させ、名古屋の皆さんが多數ご出演される。大阪から僕たちの他に猿・玄兩君がご出演。名演續出。お樂しみは地獄リレー。また御免さんにも二十年ぶりでお會ひした。
 出番七番手、お忘れ物承り所。長丁場でお客樣もヘロヘロだらうと想像して、氣を引き締めて舞臺に昇らせていただく。
 ところがである。このお客樣方は疲れをお知りにならぬ。ほぼ全編演者の皆さんの名演を聞いてきた「演者」の僕ですら出る前にまつたりと疲れてゐるといふのに!
 印象は、引火性の激しいガソリンのプールにマッチを放り込む感じ。笑はせるパンチラインをもつともつと提示しろと催促される。そして暖かい。
 落ち前の嫁はんの「ちよつとー、あんたー」のところでは、久方ぶりに部分聲飛びの裏返り。傳へたい、樂しんでほしいと演者も高いところへ昇る。全部吐き出して舞臺を降りる。感謝。
 獨立系の僕にとつては、少數の仲間以外の藝を見ることは少ない。井の蛙だ。その意味で今回の名古屋訪問は、大海を知る良い機會であつた。
 たくさんの同好の士が完成度の高い物を次々繰り出す。袖や裏で堪能。壓倒された。頑張らうといふ氣になる。
 打ち上げの酒、美酒。百年の既知の如く接して下さつた皆さんに感謝。ありがたうございました。