第356回 吉報

 スケジュールは携帶で管理してゐる。仕事の豫定は直ぐに入れるんだが家庭の豫定はついつい入力が後回しになる。
 昨日、妻が言つた。
 「私、實家へ歸らせて頂きます、水曜に」
 ああ、頭がクラクラする。
 なななにい!先妻に續いて君までもが同じことを!わかつた!改める!改めるべきは改める!氣をつける!何に氣をつけてよいのか解らんがトニカク氣をつける!まて待てマテ、君大體、實家へ歸つたところでワシはそんなにあちこちに養育費は拂へぬぞ!今だけでも精一杯なんだ。君が一番解つてをらうが。話し合はう!話せば解る、話せばあああ!
と叫びかけたところで、岩國法事の先發隊のことを言つてゐると氣が付いた。
 僕は瞬間的に頭に沸き上がつた反省の瓣をグビリと飲み込み、よく解つた旦那のやうな顔をしてウチの三婦人(チビ含む)に嚴かに言つた。
 「道中氣をつけるんだよ」
 僅かな間だがバチェラーライフを存分に樂しむ豫定だ。バラの花びらの浮いたジャグジーで全裸の金髮女性二人とシャンパンを酌み交はしてインモラルな一夜を過ごすのである。
 マイミク諸侯の嫉妬がビンビン傳はつてくるのがわかる。