第339回 タイムマシン

 インパクトの強かつたことは幾つ何十になつても覺えてる。華々しい思ひ出に埋もれさうになりながらも、若い時代に見た忘れ得ぬ出來事…。
 シャモニの奧…。當時流行つたテレビゲームのテーブルに、熊のやうな體躯の「あの人」はいつも居た。思ひ返せば當時(今もさうだらうが)、落大の回りには部員竝みに、否、部員以上に落大と時間を共にしてゐた人達がいた。
 コケツさんが代表だ。(故)淺野さんなんかもさうだらうか。淺野さんなどは後に大學院寄席に出た。テニス部なのに!
 みんな可愛がつてくれた。應援團の川上さん。古武道の速見さんなんかは、遠くから僕を見つけると、ワザワザ走つてきて僕をボロ布のやうにボコボコにして下さつた。
 他クラブや他大の人でよく居た人達。あの人らは場所に憑いてたんやのうて、落大に憑いてたんやと思ふ。若い時分はそれら憑いてた人らに可愛がられ、説教食らはされてた。落大もそれを當たり前とする緩くおおらかなとこがあつた。
 
 昨夜仕事終りに天神プロップに驅け付けた。福島の兄貴が「あの人」と飲んでゐた。昔と同じ體積、黒さ。髭に白いもんがチラホラ。體躯の割に甲高い聲と輕妙な語り口。おつさんさんだ。
 目が合ふ。早苗さんとこで手術して直さはつたらしい。醫學の進歩を知る。
 彼に救ひを求める女性を雨の日に助けに行つた話。その後の福島兄の神樣の講話。田舎から出たてだつた僕には刺戟が強すぎて忘れられないエピソードが多數。昨夜細部まで復元できた。
 
【陣中日誌】
朝、お握り、ハンバーグ、アスパラベーコン
晝、天丼、玉吸。
夜、妻お忙しのため惣菜屋のおかずとビール。