第324回 イスが欲しい、欲しいものはお前だけ

 「ひつさしぶりー」とワシ。
 「おかへりいー」いつもの酒店立飲部の母さん。
 イワシと生姜の炊いたん、おでんのジャガイモと厚アゲ、芋ロック二杯。
 醉ひに任せて輕口を放ち、右のおつさん、左の兄ちやんを卷込んで渦や輪は少しづつ大きいものになる。
 高校新卒のじいさん(過去ログ參照)が歸つて來る。高校卒業と同時に年金受給のネタ運びに痺れる。
 かけつ放しのテレビのニュースに突込んでタイムリー、アイロニーを驅使し倒す。
 殺人事件や事故には「お〜お、可哀相に」、横領事件には「惡いやつちやなあ」、季節のニュースには「そんな餘裕ないわ」が合言葉。そして口々に感想。
 意外に、朝青龍のモンゴル行に醉客らから「歸つて來るな!」と怒號が上り、巷の反感を肌で知る。文化的だ。内容も健全だ。
 「計算して」と僕。「何や、もう歸んのかいな、千圓行つてないで」と隣のおつちやん。母さんが「九百八十圓です」
 「…ワシ『ガッチリ買ひませう』出よかなあ」おつちやん、その番組何十年も前に終はつてまつせ。司會者の片方死にましたで、言ふたらジッと遠いとこ見てはつた。
 おつちやん、何、思ひ出してたんやろ。…絶對、あのオープニングの立て瓣やと思ふわ。
 
【陣中日誌】
夜、ピザ、燒酎。