第322回 世界陸上

 事務所が近いので、打ち合はせには、シェラトン都ホテルの上本町をよく使ふ。有名人がよく利用する。世界バレーの時は監督と隣りの席だつたし、普段はヤクザの大親分さんなんかもゴロゴロいる。
 さて、世界陸上だ。上本町は占領状態だ。昨日も喫茶してゐると後ろの席ではセルゲイ・ブブカがロシア娘と輕口を叩いてゐる。
 有名人がいるのだらう。同席する人たちはあれは誰々だ、あれはあの人だ、と打ち合はせにならない。
 僕は關心かあまりないから「フーン」とつれない返事を連發。
 でも「アスリート」と言ふと縁遠いんだが、使つてはる言葉が
 「ワシ飛びましてん、もうアカン思て」とか、
 「おまえ高飛びせい、家族面倒見たる、アホか今すぐじや」とか
 「もうとにかく走りまんねん、止つたら終はりでんねん、ほんま自轉車ですわ」とか、
 「追ひ込みきつついですわ、追ひかけて來る奴等から逃げてまんねん」とか、
 「これ以上、放る玉ありまへんわ、槍投げて來やがつた、矢つがへて弓引いたれや」とか毎日毎日、眞面目な顔して言つてるかと思ふと、意味は違ふんだけどグッと親近感が湧いてくる。
 頑張れといふ氣になる。世界陸上、樂しんでゐる。
 
【陣中日誌】
晝、餡かけあげそば定食。
夜、ナスと挽肉の炒め物、鯛の刺身、自家製柳陰、あと飯。