第274回 三つ子の魂 ― 現世の調和の缺如は今回の主題に非ず

 一九七〇年、「人類の進歩と調和」を合言葉に千里丘陵で開催された、かの萬國博覽會は僕にとつて最初で最後の博覽會である。あれに比すれば沖繩、鶴見そして名古屋も、僕にとつてはなかつたに等しい。
 當時四歳だつた僕は、亡き篠樂の婆ちやんと一緒に行つたのを覺えてゐる。卷き壽司を食つてゐたら雨になり、太陽の塔の下、お祭廣場に逃込んだんだ。形の變はつた建物、初めて見た外人。そしてタッパに入つた大量の卷き壽司。雨…。當時の記憶はそれだけである。
 大人になつて自由に資料を檢索できるやうになつて、タイムカプセルの中身が舊第四師團部(大阪城内の美術館)で展示されてゐたのを見たのが縁で、爾來、圖書館、ネットで當時の樣子を何とか頭中に復元しようとしてきた。
 殊に現地、萬博公園は僕の大好きな場所で、今も娘たちを連れてよく行く。下の娘が當時の僕と同じ年だ。
 「お前たち、よく覺えておきなさい。昔、ここで、世界中の人たちが集まつた大きなほ祭があつたんだよ」
 お祭廣場の屋根の跡を見れば、當時の巨大さが想像できるだらう。キラキラのおつさん ― これは我が子らの太陽の塔の呼稱であるが、子供には岡本の尋常ならざる才能も實に親しみのあるものに見えるやうだ。岡本の天才さが垣間見える。
 あの時、僕が夢見た華やかな未來生活は、僕の未來像である。携帶電話は既に手に入れた。早く三洋の人間洗濯機が欲しいものである。
 
 さて、本題に入るが、ケンタッキーフライドチキンの第一號店は、期間中の萬博會場内。これ、豆知識。この時に始まり、大切に守り育ててきた、ケンタと僕の蜜月、僕のケンタへの熱い想ひはまた今度に。
 
【陣中日誌兼戰鬪詳報】
朝、韃靼そばふりかけ、飯、味噌汁
晝、カルボナラ、ガーリックトースト
夜、きのことピーマンのパスタ、お茶。