第273回 一ト月ほど前のこと

 やん愚師から
 「お前のメール、愚麗さんとこ行つてるみたいやで」との聯絡を受けた。
 初めは何の事か解らなかつた。愚麗さんに直メールを出したことがない。詳しく聞くと、どうも笑太郎師に打つた内容のやうだ。
 調べてみてわかつた。笑太郎師の返信先設定の方法が間違つてをられ、師のメールに返信すると、全部愚麗さんのアドレスへ飛ぶやうに設定されてゐたのである!
 
 振り返ると澤山の笑太郎師のメールに返信した。それらが一通も師の元に歸つてゐないどころか、愚麗さんのところに、笑太郎師宛のわけの解らぬ内容のメールが屆いてゐるのだ。
 そればかりではない。笑太郎師の全ての知人ご友人が打つ返信は、全て愚麗さんの元に飛んでゐるとも解釋できる。これは大變なことである。
 師の携帶が僕と全く同じ機種といふことで、解決策の設定をご聯絡申し上げ、現在は解決に至つてゐる。
 
 後日、師にお話をお伺ひした時、師の曰く、
 「メールの世界といふものは、何と薄情なものだと思つてゐた。誰からも返事が全然來なかつたから」とおつしやつてをられた。
 愚麗さんにおいては「笑太郎さんが『何故か』自分のサーバを使つてメールをやりとりしてをられる」と勘違ひしてをられたやうである。
 で、關係者たちは、師のメールに必死で愚麗さん宛の返信してゐたわけだ。この登場人物らは全員善意なわけで、現代科學技術文明が生んだ悲劇であつた。
 
【陣中日誌兼戰鬪詳報】
朝、拔