第267回 興味

 獨り、モスバーガーで時間待ち。テーブルの前に手話で話す一團がいる。
 それを見ながら、去年のMRI檢査を思ひ出した。
 前頭葉胡麻粒大の空洞がある、と(これは後日問題ないことが判明したが)醫者が言つた。
 僕は一度だけ右手の痺れを感じたから腦梗塞の檢査に來たんだが、前頭葉は「言語と感情」を司ると聞いて内心慌てていた。
 別に言語を失つて色んなことを人前で發表できなくなるのは問題ではない(いつそ氣負ひがなくなり樂になれるかも知れぬ)。
 ただ親しい人達の間で輕口や冗談が叩けなくなつたら、おしやべりな僕はその状況に適應するまで、かなり時間が掛かるだらうと當時大變落ち込んだ。
 妻は少し靜かになつて暮らしやすくなるかもねと微笑んだ。
 最近、肉と酒が減つたのが僕の日誌から見て取れるだらう。
 手話の人の會話をこんなにマジマジ見るのは初めてである。今、手話で爆笑してをられる。ヒーヒー言つてはる。これなら輕口や冗談は行けるかもしれない。
  
【陣中日誌兼戰鬪詳報】
朝、早くて食へず。メントス二粒。
午前、自治會長面談。大人物で好感觸。後、土地開發公社訪問。
晝、モスバーガーでアイスティL。時間待ち。
午後、近隣地主と打ち合はせ。
三時、セブンイレブンのマカロニサラダ、お握り三個。お茶。
夕、書類作成。
夜、ねじれ君、歸橿を待つて如意にて一獻。