「何や、ご飯まだ食べてへんのかいな、滿腹みたいなお腹してんのに」
例へ深夜に僕が空腹で歸還したとしても妻は僕にかう言ふ。「滿腹みたいなお腹」の下りでは僕のバディーを一瞥される。
僕はそれを無視して臺所に侵入、鍋やフライパンと、炊飯器の蓋をパンパンと開く。オカズがあるのに飯がない夜は荒れる。低氣壓だ。
「食べてくると思ふがなー」
一理ある。既に食べてることもある。しかし、米で、飯で一日を閉めたいではないか。
「君は坐つていなさい!」
炊飯器から内釜を取り出すと、サッサと手早く洗ふ。米櫃から米を二合、内釜に量り入れるとしつかり一握一握、輕く握り擦るやうに米を洗ふ。
水代へは二囘、それでいゝ。吸水時間は取れない。水を線の一粍下に合はし普通炊飯にセット。高速炊飯機能は使はない。
三十分位で炊飯器が鳴く。三分前から炊飯器前で秒讀みしてゐた僕は、鳴きと同時に蓋を開け、空氣を挾み込むやうに全體を混ぜる。この混ぜは本和嘉(池田十巣代表)仕込みだ。
たらこ、うめぼし、味噌、海苔で、輕盛りの一膳飯を決める喜びつたらない。
次囘は水加減について。
【陣中日誌兼戰鬪詳報】朝、拔き。晝、玉子丼蕎麥セット。