第135回 能力

 明石の街で三年間、僕は育み育てられた。就職して初めての獨り暮らしであつた。
 釘煮の季節に近所の行き付けの一膳飯屋のをばさんから味見をお願ひされたり、三木のばにらさんの家で店の賣り物のおでんを食ひ倒したりした。
 西明石の驛前の自宅、プチメゾンの近所には、カレーのコヽ一番、それからラーメンの「二國ラーメン」があつた。葱が多めで結構美味しいラーメンを食はしてくれた。若い時代に通ひ倒した店だ。懷かしい。
 今日、風の噂に二國ラーメンが民事再生を適用したと聞いた。また、行き付けの店を潰してしまつたやうだ。僕には本當にかういふ能力があるのかも知れない。
 
【陣中日誌】朝、。晝、かごの屋にて、天ぷら盛り合はせ、エビとイカの刺身、うどん、小松菜のおひたし、味噌汁、香の物。