「晝飯、どうしますか」
共に働く良則君の問ひかけに、私はいつもかう答へる。
「若いもんには花持たせまひよ。あなたが食べたいものを言つて下さい。私は唯々諾々と仰せに從ゐませう」
一應、かう答へることにしてゐる。これが戰ひの始まりの合圖なのだ。こゝで二人の性格の不一致が出る。不一致な箇所は二點ある。
一、店選びの不一致
彼は一度行つた店より新しい店を開拓したがる傾向がある。僕は、皆さんご承知のやうに馴染みの店を潰すまで通ひ倒す。
二、品選びの不一致
彼は少量他品目主義(○○定食とか)を望む傾向がある。僕は、一點豪華一點集中全面突破主義 (ラーメン大、燒きそば大、オムライス大とか)である。
毎晝、奈良で、大阪で、京都で、彼の提案と僕の抵抗は車中で激突する。ハンドルは彼が握つてゐるので、大變不利なのだが彼の提案に私は樣々な理由をこねくり囘して囘避、何とか自分の好みの店に誘導しやうと百萬言を費やす。
時折、彼の謂ひに從つて新規開拓する店が僕の新たな馴染みとなつていくんだが、9:1の割合で馴染みの一點豪華主義の店を 強引に選擇してゐる現状だ。
最近、彼が太つてきたのが少し氣になつてゐる。
【陣中日誌】
朝、小エビ雜炊。
晝、ヤキソバ。
晩、秋刀魚、めざし、切り干し大根、ポテトサラダ、味ご飯、燒酎。