第99回 ドライカレーを入れる家もある

 妻の實家から大量の野菜が到着した。妻とをかしな目配せをして、久方振りの「すき燒」に決定。
 張り込んでちよつとえゝ肉を購入する。二十年選手の鐵のフライパンをキンキンに熱する。CGC北加賀屋製の脂身を滑らせる。肉の脂の匂ひが擴がる。
 肉を燒く。一枚は家族に見つからぬやうにさつと味見。
 野菜には白菜、葱、大根葉などを投入。豆腐、絲コン、椎茸を投下。砂糖、醤油、酒で調味。ぐつ/\言ひ出す。
 卵を器に割り入れる。箸で黄身を潰す。一枚目の肉(實際は二枚目)をふがふが言ふて食ふ。
 そして家族に嚴かに宣する。
 「よーし、食ふてよろし」
 四本の箸の空中戰。僕はCGC北加賀屋製の脂身を堪能する。下の娘は絲コンを、上の娘はおうどんを、妻はえゝお肉を。お後、僕は豆腐で冷や酒を。
 戰ひが終はる。寢て、起きる。
 さあ、夜に最終、鍋一杯に作つておいたすき燒を翌日にもう一度暖めて食ふ。これがすき燒の醍醐味だ、と思ふ。

【陣中日誌】

朝、夕べのすき燒。大根葉の一草鬻。
夜、最終すき燒き。さやうなら。