第816回 あいご【愛護】

可愛がって大切にすること。― 学研「新レインボー小学国語辞典」改訂第3版より。

9月9日(水)午後1時30分、池田銀行トイロカルチャ「高野隆宏的心」60分40名。時間短すぎ。90分欲しい。
昨日、自宅でコチョコチョ事務やってたら鳴り響く電話の音。なんぞいな?ガチャリ。受話器を取ると天寧のクラスの娘のお母さんから。クラスの電話連絡網だ。
この人とは実に縁がある。朝であろうが昼からであろうが、連絡網で回ってくるときはいつも僕が取ってしまう。この人が架ける時たまたま電話の横にいるだけなんだ。出掛けている時には架からない。
「あ、また、お父さん」
きっと彼女は僕を失業者か引きこもり、はたまた遊び人の金さんみたいに思っているのだろう。「また」と言った。まあいい。
問題は内容だ。彼女は自分のメモを読み上げて曰く
「本日、天王寺動物園にて強盗事件発生。犯人は犯行現場から逃げて未だ天王寺界隈に潜伏中。捕まっとらん。危険なので児童は天王寺駅まで先生方が付き添い電車に乗せますから後はヨロ(要約)」だと!
そう言えばさっきから大阪深南部はヘリが糞にたかるハエのようにブンブン飛んでいた。これか!
わかった、わかったんだが、彼女、話が長い。延々何かを読み上げている。連絡網だからそれを僕は次に伝えなきゃならないんだろ?何もメモしてないぜ。
「アイゴー」。
僕は呟くとまだ喋り続ける彼女を遮り言う。
「あのー、長いこと喋ってはりますねんけど、それ誰が言いまんのん」
彼女はそら来たっとばかりにクイックで返す。
「ええ、そんな人のために学校から、携帯メールにこの内容のメールが入りますから」
「あ、さよか」
彼女は確かに「そんな人のために」と言った。そんな人!「そんな人」とはきっと遊び人の金さんのような人を指しているに違いない。ああそうですよ、僕は金さんですよ。すいませんねー、金さんで。これもまあいい。
テレビを見ないのでよく分からないんだが、この泥棒、売店の売り子の狂言と後に解ったらしい。
詳しいことは解らん。きっと嘘のつき方に生魂根が入ってないんだと思う。突き通そうという気迫がないんだ、ばれるのが早すぎるじゃないか。多分事情聴取に耐えうるだけの細部に渡る構築や話の合理性、つじつまや整合性もないんだろ。
もしそうならこの売り子は生涯嘘などつかぬ方が良い。すぐばれるような嘘なら付くな。嘘をつかず誠実に生きよ。僕は少なくとも墓へ持っていかなきゃならん話が三本ある。アレとアレと、ソレに関連してアレだ。関与者の生命・身体・財産の安全に関わる重大問題だ。
酒は強い自白剤だ。この酔い太坊のドシャベラがこれまでも決して口にせぬし、将来に渡って口にせぬのだから内容は推して知るべしだ。聞きたけりゃ墓で会おう!
しっかし、全く人騒がせな奴なんだが、檻の中でゆったりしてる動物を見てて、自分も入りたいと思うた末の犯行ならば解らんでもない。まあ、ゆっくりして来なさいってこった。